「君の名は。」父が語る新海誠監督 “家業を継がせるつもりでした”

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 公開からひと月で興行収入111億7000万円! あの宮崎駿監督以外、成し遂げた者のないアニメ映画での100億円超えをやってのけた「君の名は。」。150億、いや200億円も狙えるとの声もある。監督・原作・脚本をこなした新海誠(43)とは何者か、長野で建設会社を営む父が語る。

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 長野県南佐久郡小海町が新海監督の故郷。そこで県内屈指の老舗建設会社新津組の社長を務めるのが父の新津正勝氏(72)。

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 創業は明治42年で私が3代目。4代目はもちろん誠に継がせるつもりでした。ただ、大学出たてで新津組に入れるのではなく、他で修業させてからと思っていましたから、大学4年の時に都内の住宅メーカーの社長さんにお願いしました。誠も何度か、その会社にお邪魔していたんです。

 だが秋口になると、誠が電話をかけてきたんです。

「お父さん、ゴメン。若い時でないとできない仕事がある。だから紹介して貰った会社には……」

 もう大人ですからね、好きにしていいとは言ったものの、どうやら私が修業させようとした会社の近所で、社員募集をしている会社を見つけてしまったらしい。

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 それがゲーム会社の日本ファルコムだった。就職した新海監督はここで映像制作などを学ぶ。
 
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 ファルコムさんには5年お世話になりました。その頃たまに上京した女房が誠の部屋に泊まった時など、夜中に帰宅してから3時頃まで自分のアニメを作り、6時に起きて出社、という生活だったそうです。

父の新津正勝社長(会社受付のポスターと)

■土台には故郷がある

 何がきっかけでアニメだったのか。女房は県の美術展で入選するような絵を描いていましたから、母親似なんでしょうね。そういえば小学校4〜5年の頃、出始めたばかりのパソコンをねだったことがありました。「これ欲しい」と持ってきた広告に掲載されていたパソコンは70万円。いまでこそ、年商70億円の新津組ですが、そんな高額なもの! でも頭ごなしに否定もできない。テストでクラス1位になったらと言うと、本当に1位になってしまった。結局、半額位で買ったのかな。まだ会社にもパソコンなどないから、誠は問い合わせたり、マニュアルを見て立ち上げていた。あれが転機だったのかもしれませんね。
 
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 その作風は新海ワールドとも言われる自然描写の美しさが特徴である。

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 町に映画館はないけれど、六本木ヒルズと佐久市の試写会で2回見ていますよ。

 光の描き方など綺麗ですね。誠は小学校ではスピードスケートをやっていて、早朝5時くらいに凍った松原湖で練習していました。マイナス20度にもなるとダイヤモンドダストが発生するんですよ。そういったものも取り入れているのかな。「君の名は。」で主人公のひとり女子高生の三葉が住むのは岐阜と言われていますが、踏切シーンなどは誠が高校通学に使った小海線にそっくりです。別の作品では小海にロケハンに来たこともありましたから、土台には故郷がある。新海の“海”も小海から取っているんじゃないかと思います。

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 新海監督は大成建設のテレビCMも手掛けているが、ご実家のCMは?

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 いやいや、CMを出す会社じゃありませんし、新海監督にお願いなんて……。

「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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