安倍総理の描く「改憲」、日程はいつになる?

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安倍晋三総理

 安倍晋三総理(61)は第1次政権での「忘れ物」をすでにひとつ取り戻している。それは果たせなかった靖国参拝である。そして、もうひとつの忘れ物の回収がいよいよ始まろうとしている。憲法改正。争点らしき争点が見当たらなかったなかで、最注目ポイントだった改憲勢力3分の2を巡る攻防を制した安倍総理が描く、今後の政治日程を読み解く。

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 今回の参院選のキーワードは「アベノミクス」でも「野党共闘」でもなく、結果的に「改憲」となった。

 すでに衆院では自公を含めた改憲勢力が3分の2を超えていたものの、参院でもそれを確保するには自民・公明・維新で74議席以上を獲る必要があったわけだが、結果は「77」。岩城光英法相と島尻安伊子沖縄北方相の現職2閣僚が落選する痛手があったとはいえ、77という数字を前にこの失点も霞み、安倍総理に我が世の春が到来した感が漂う。これで彼の悲願である戦後初の憲法改正も、俄然、現実味を帯びてきた。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は、

「大勝したと言っても、アベノミクスの化けの皮は剥がれつつあります。安倍政権を支えていたのはアベノミクスへの期待感ですが、これから経済がV字回復していくなんてあり得ない。つまり、安倍政権のピークはまさに今で、これからは楽観視できません」

 と、苦言を呈するのだが、

「参院選勝利を受け、官邸内には『安倍政権は小泉政権以来の長期政権になる』との声が早くも上がっています」(官邸担当記者)

 どうやら「大宰相」への道が視野に入ってきた様子の安倍総理は周囲に、

「熊本地震、サミットと続いてゴルフができていない。早く、のんびりとゴルフがしたい」

 こう漏らすほどの「余裕」ぶりだが、政治部デスクが解説するには、

「安倍総理の自民党総裁任期は2018年9月まで。そう考えると、憲法改正をするならば悠長にしていられません。事実、彼は秋の通常国会から衆参両院の憲法審査会を動かすと明言しています」

 前出の伊藤氏曰く、

「国民的合意の得られていない9条改正はとても無理でしょうから、環境権や緊急事態条項を加えるといった、多くの人が反対しないであろう『つまみ食い改憲』から手をつけることになると思います」

 自民党関係者が続ける。

「他にも財政規律条項を盛り込んだり、今回から『合区』となった参院で、都道府県ごとの議席を維持するための改正が検討されていますが、いずれも本丸の9条とは関係のない『お試し改憲』になるでしょう」

■「最短の場合…」

 その改憲日程を探ると、

「英国のEU離脱を見て分かるように国民投票は非常にリスキーです。失敗すれば、間違いなく内閣総辞職に繋がります。また第2次政権発足時、安倍さんの側近は『憲法改正は安倍政権の最終目標だ』と言っていました。リスクとこの言葉の意味を考えると、国民投票は安倍総裁の任期ギリギリの時期になるのではないかと見ています」(伊藤氏)

 政治ジャーナリストの山村明義氏も、

「本来、衆院選を同時に行い、改憲を争点の前面に出して勝負を賭けるはずだったのに、それが今回できなかった。この時点で、改憲スケジュールは延びたと言えます」

 こう解説。さらに先のデスクも、

「憲法審査会を含め、国会での議論に少なくとも1年はかかる」

 と、一朝一夕には憲法は改正できないとしつつも、

「最短の場合、来年秋の臨時国会で憲法改正の国会発議は可能です。そして、その年末に国民投票を行うとともに衆院を解散する。自民党主導の憲法改正発議の余勢を駆って解散を打てば、総選挙でも自民党の有利に働くでしょうからね。この『ダブル選』に勝利すると安倍総裁の任期延長論が党内で湧き上がり、2020年の東京五輪までの続投が視野に入ってきます」(同)

 こうして、お試し改憲後の超長期政権を築いた後に、

「総理を退き、憲法審査会の会長の座に就いて、自身の政権では果たせなかった念願の9条改正を取り仕切る。これが安倍総理の描いている壮大な夢です」(同)

 景気は悪化中で曇天模様でも、憲法改正に向けた安倍総理の視界は快晴のようである。

「総力ワイド特集 景気悪化中なのに改憲勢力2/3! 国民が忘れられない『民主党政権』のトラウマ! 参院選 我ら凡俗の審判」より

週刊新潮 2016年7月21日参院選増大号掲載

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