脳腫瘍「松方弘樹」に更なる危機 取締役を務める企業に“融資詐欺”疑惑

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“神輿が勝手に歩ける言うんなら歩いてみいや!”と『仁義なき戦い』で啖呵を切った松方弘樹(73)は、またもや担ぐ神輿を間違えたのか。脳腫瘍の発覚と相前後して、取締役を務めた会社に巨額の“融資詐欺”疑惑が浮上して――。

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松方弘樹

 ヤクザ映画で人気を博し、プロ顔負けの腕前で巨大マグロを仕留めてきた“釣りバカ”俳優も、こんな荒波に呑み込まれるとは想像しなかったであろう。

 古希を越えてなお、壮健そのものに思えた松方が、突如として“脳腫瘍”を公表したのはご承知の通り。スポーツ紙記者によれば、

「2月上旬から“全身がしびれる”、“腕に力が入らない”といった症状を訴えるようになっていた。周囲は当初、インフルエンザを心配したようですが、都内の総合病院で精密検査を受けたところ“脳に黒い影”が見つかった。脳腫瘍の疑いが強まり、25日には内視鏡を用いて患部の組織を切り取って検査する“生検”に臨んでいます」

 発表された検査結果は「脳リンパ腫」。所属事務所はすでに、3月からスタートする筈だったコンサートツアーだけでなく、6月に控える主演舞台の降板も発表。本人にとっても、今回の脳腫瘍は青天の霹靂だったに違いない。その一方で、

「異常を察知してから間を置かずに病院で検査を受けたのは正解でした。早期に発見して治療に当たらなければ、脳腫瘍という病気には立ち向かえません」

 と言うのは、ひたちなか総合病院の三橋紀夫・放射線治療センター長だ。

 松方といえば、かつては“ひと晩でウイスキーをボトル2本空ける”と豪語したアウトロー俳優。これまで大病を患ったことはないものの、往時の無理が祟ったという声もあるが、

「不摂生な生活と脳腫瘍に因果関係は認められていません。遺伝的な傾向や加齢も関連性は薄い。有効な予防策としては、定期的に脳ドックを受ける以外にないのです」(同)

 早々に長期療養を宣言したことについては、

「専門医であれば脳腫瘍の程度を問わず、最低でも半年間は治療やリハビリに専念するよう勧める。腫瘍の状態によっては、入院がさらに長期化することも十分に考えられます」(同)

 突然の病魔によって、役者人生の岐路に立たされた松方。だが、そんな折も折、彼の身にはもうひとつ勝るとも劣らない“危機”が降り懸かっていた。

■役員欄に記されていた“本名”

 病床の松方を悩ませる“事件”は、昨年12月31日に起きた、ある企業の経営破綻に端を発する。

 この日、東京地裁から会社更生手続きの開始決定を受けたのは、船舶の運航管理を手掛ける「ラムスコーポレーション株式会社」と、船舶を所有する関連企業38社を合わせた「ユナイテッドオーシャン・グループ(UOG)」。

 実は、ラムス社の乗員名簿ならぬ、会社謄本の役員欄には“目黒浩樹(こうじゅ)”という松方の本名が記されていたのである。

 経済部記者が破綻劇を振り返るには、

「グループ全体の負債総額は、実に1400億円に上ります。“年金消失事件”が取り沙汰されて倒産した旧AIJ投資顧問の1313億円すら上回る、昨年最大の大型破綻になりました」

 大手海運企業の幹部が解説する。

「UOGはインド系実業家のヴィパン・クマール・シャルマ社長が一代で築き上げた“船主会社”。自動車運搬船をはじめ、石炭や穀物を乗せる8万トン級のパナマックス船など、約40隻の船を保有しています。“海運市況の悪化によって収益が低迷し、資金繰りが厳しくなった”ことが破綻の原因とされています」

 だが、昨年大晦日の破綻劇には、景気の悪化とは別の、あるキナ臭い理由が取り沙汰されていた。

「UOGは、債権者である東京三菱UFJ銀行、りそな銀行といったメガバンクから、会社更生手続きを申し立てられました。しかも、契約内容を偽って巨額の融資を引き出し、そのうち1000億円近くが焦げ付きかねない状況にあるという。船主会社は、20億~100億円に及ぶ新たな船の建造費を賄うため金融機関に融資を求めます。ただ、UOGはその際に建造費を水増しして申請したようなのです。同時に、“傭船(ようせん)契約”を偽って申請した疑いも浮上しています」(同)

■“業界のガリバー”を利用

 疑惑の核心に触れる前に、耳慣れない海運用語への注釈が必要だろう。傭船契約とは、船主会社が海運業者に船を貸し出してリース料(傭船料)を得るための手続きである。

 マンション経営に喩えると、船主会社が大家で、海運会社は不動産仲介業者となる。前者の物件に後者が客を斡旋し、家賃収入を手渡すわけだ。

 ただ、UOGの傭船契約は、業界でも極めて特殊なケースと捉えられていた。

 別の海運関係者が言う。

「UOGは同業者と比べてもかなり大規模な船主会社ですが、その存在を際立たせていたのは、保有する全ての船の傭船先が日本郵船だったことに他ならない」

 言うまでもなく、日本郵船は連結売上高が2兆円を超える世界的な海運企業である。だが実は、2015年3月末時点で540隻に上る日本郵船の傭船隻数のうち約7%が、一般的な知名度はゼロに等しいUOGによって占められているのだ。

 海運業者が倒産すればアテにしていた傭船料が海の藻屑となってしまうため、船主会社は複数の業者と傭船契約を結ぶのが常識。しかし、UOGはリスクを背負う反面、“業界のガリバー”の看板を最大限に利用してきた。

「船主会社は傭船料を返済に充てるので、融資する銀行は、新たに建造される船がどこに、いくらで貸し出されるのかを重視します。その点、日本郵船との傭船契約があれば、どんなメガバンクも歓迎するため、UOGは巨額の融資を集めることに成功したのです。しかし、ある銀行と取引する際、UOGは日本郵船との契約期間を、契約書にある10年ではなく20年に書き換えていた。また、1日当たりの傭船料も、実際は契約年数に応じて金額が変動するのに、固定で2万ドルと報告している。金融機関はこれを“改竄(かいざん)行為”と判断し、UOGを破綻に追い込む債権者申し立てを敢行したのです」(同)

 病身の松方に追い打ちを駆けるトラブルである。

「特集 船主会社取締役に名を連ねて轟沈! 脳腫瘍『松方弘樹』の危機は1000億円“融資詐欺”の賠償」より

週刊新潮 2016年3月10日号掲載

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