プルシェンコも真似できない「羽生結弦」に凄い技術がある!

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 今年の「NHK杯」は、まるで羽生結弦(20)のために開かれたかのようだった。彼が今大会、叩き出したポイントは「皇帝」プルシェンコ(33)の記録をも大きく上回る世界最高得点。ケガに手術と不遇つづきだった羽生が「皇帝」を超えた「技術」とは。

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陸上の100メートル走でいえば「8秒台」?

 羽生が今大会マークした322・40。これが、いかに凄いかを説明するためには、フィギュアの複雑な採点法を少々知る必要がある。

「技には一つ一つ難易度に合わせて基礎点があり、その完成度によって得点が加算されます。なかでも4回転ジャンプはポイントが高く3回転の倍も違う。だから、4回転を複数回入れないと、優勝は狙えません」(スポーツ紙記者)

 すでにショートプログラムで2度の4回転ジャンプを跳びトップに立った羽生が、フリーで見せたのは「4回転サルコウ」、「4回転トウループ」そして「4回転、3回転連続トウループ」という大技。元プロスケーターの佐野稔氏が興奮気味に言う。

「これまでもSPで2回、フリーで3回の4回転ジャンプに挑んだ選手はいましたが、いずれも完璧とは言えません。“完璧”というのは、着氷のグラつきが皆無ということ。だから、322点というのは、陸上100メートルで8秒台が出たのと同じぐらいの数字なのです。あり得ないことが起きてしまった」

 その羽生が、理想の選手と聞かれて大会中も名前を挙げたのがプルシェンコだ。すでに得点では超えている相手だが、「僕にとって絶対のヒーロー」と敢えて言うのには理由がある。

■4回転の種類を増やす

 元オリンピック代表の渡部絵美氏によると、

「もともと4回転ジャンプは体に負担が多く、危険と言われた時代もあった。しかし、プルシェンコは10回以上も手術を受けるほどケガに悩まされたものの、“男の勝負には4回転が必要なんだ”と挑戦を続けました」

 その結果、グランプリシリーズでの優勝22回や、トリノ五輪で世界最高得点での金メダルに輝く。そんな相手を、体重52キロという細身の羽生がどうやって超えたのか。

「どんな練習をしているのか羽生は絶対口にしない。オーサーコーチのやり方なのでしょう。しかし、4分30秒という長い演技の後半に4回転の連続技を完璧にこなすスタミナからは、激しいトレーニングを積んだことが見て取れます」(佐野氏)

 それだけではない。今大会では2位の金博洋(中国)とは56点の大差。金もフリーで4回転ジャンプに4回挑んでいるが、

「採点でいえばGOE(出来ばえ点)が違った。上半身の使い方などを見られるのですが、これだけで10点ほど差をつけています。また“音楽の解釈”の採点ポイントが9・89というのも凄い。和をテーマにしたのに審査員の多くが、その世界観を理解したということですから。演技力に関しては、もはや点数の伸ばしようがない」(同)

 追いすがるライバルを突き放すには、4回転の種類をさらに増やすしかない。大会中、羽生が「絶対王者」と口にしたのは、自分には出来るという自信があったからかも知れない。

「ワイド特集 日出ずる処 日没する処」より

週刊新潮 2015年12月10日号掲載