『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』は本当か?

食・暮らし週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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 健康に勝る宝なしとはよく言われるが、確かに巷には、病から免れる方法を伝授する“健康本”が氾濫している。だが、それらの中身を検証してみると、マユツバものも少なくない。怪しい健康法によって、寿命を縮めてしまわないための真贋判定をお届けしよう。

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『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』は本当か?

 書店に溢れ返る“健康本”のなかでも、この一冊は、とりわけ、高血圧に悩んでいる方々の目を引いたに違いない。

 共立女子大学の上原誉志夫教授の著書『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』である。それには、次のように書かれている。

〈食塩摂取量が増加しても平均寿命には変化がなく、食塩摂取量が多くても関東信越各県のように平均寿命が高いところもあります〉

 塩分の摂り過ぎは早死に繋がるというこれまでの通説を覆し、さらに、みそ汁の効能も謳っている。

〈味噌汁を飲んでいる人は、血圧が本当に高いのかを調べました。結果、3杯飲んでいても1杯でも収縮期、拡張期のどの血圧にもまったく差はありませんでした。逆に、たくさん飲むと血圧は下がるという結果も大規模な疫学調査では見られています〉

 要は、塩分の摂取量は気にせず、大豆発酵食品であるみその持つ降圧剤としての役割に加え、美肌効果や抗がん作用にも目を向けるべきだと主張しているのである。

■編集者に押されて

 しかし、『医者が絶対にすすめない「健康法」』などの著書がある、新潟大学の岡田正彦名誉教授が指摘する。

「塩分の摂り過ぎが高血圧を引き起こすというのは、医学的根拠に基づいたものです。高血圧を治すためにみそ汁を飲むなんてことをすれば、逆にリスクを高めてしまうことになる。もし、大豆に含まれるイソフラボンなどの抗酸化作用を得たいのであれば、豆腐などから摂ればいいわけです」

 続いて、“ドクター秋津”こと、秋津医院の秋津壽男院長も、

「人間には、塩分感受性と非感受性の2タイプがある。塩分を摂っても血圧の上がらない非感受性は、全体の4~5割。そのタイプは、いくらみそ汁を飲んでも構いませんが、高血圧に悩んでいる人は、ほぼ感受性なので、無理に飲むようなことは絶対に避けるべきです」

 なのになぜ、上原教授は“みそ汁健康法”を提唱するのか。本人に訊ねると、

「WHOの推奨する1日5グラム未満という塩分摂取量を達成している国は、どこにもありません。なので、単に塩分を減らすのではなく、減らすのと同等の効果を得られる食品としてみそ汁をお勧めしたいのです。みそ汁には1杯約1・5グラムの塩分が含まれていますが、実は、摂取量を30%カットしたのと同じ効果がある。とはいっても、みそ汁で高血圧治療なんてあり得ないのですが……。嫌々ながらも、編集者に押されてあのタイトルになってしまいました」

 中身は二の次、まずはタイトルありきだったということか。

「特集 巷にはびこる『怪しい健康法』の真贋判定」