『下町ロケット』演技の評価が真っ二つに分かれた「吉川晃司」

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 アクの強い仇敵、味方の裏切り、土下座、そして、胸のすくような逆転劇――。連想ゲームのヒントは『半沢直樹』と変わり映えしないものの、先月18日にスタートした連ドラ『下町ロケット』が目下、絶好調である。なかでも注目を集めるのは、ギラギラとした存在感を放つ吉川晃司(50)。ただ、肝心の演技の評価は真っ二つに分かれているのだ。

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ギラギラとした存在感を放つ吉川晃司

 阿部寛が社長役を演じる中小精密機器メーカーの本社に、黒塗りのハイヤーが横付けされる。颯爽と降り立ったのはスリーピースのスーツを着こなす、銀髪オールバックの吉川。

 阿部と対峙する大手重工メーカーのエリート部長という役どころだ。

「身長189センチの阿部と並ぶと、どんな俳優でも迫力負けしてしまう。その点、高校時代に水球の日本代表に選ばれたこともある吉川の逆三角形の体型は、阿部にもヒケを取りません」

 とは、スポーツ紙の芸能デスクの評。古川の抜擢もあってか、『下町ロケット』は、今期の民放連ドラでは最高視聴率となる18・6%を叩き出した。

「TBSの“チーム半沢”スタッフが手掛ける池井戸潤作品の3作目なので、放映前から期待度は高かった。今回も『半沢』と同じく“濃い”ドラマですよ」(同)

 ベテラン俳優による脂っぽい演技に、松平定知・元NHKアナの重苦しいナレーションが加わり、ドラマを観終わると胃もたれは必至。主人公の阿部も“正義は我にありだ!”と叫ぶような熱血漢である。

「そうしたなか、準主役級の吉川だけはクールなキャラクターに徹している。そこが渋カッコいいと女性人気も再燃中で、視聴率の底上げにひと役買っているのは間違いありません」(同)

■顔の“どアップ”

 とはいえ、ライブで“シンバルキック”を繰り出すロックンローラーのイメージが強い吉川に、巨大企業の“クールなエリート部長”が務まるのか。

「セリフは棒読みですし、滑舌も悪い。演技も共演者からは見劣りします」

 と手厳しいのはライターの吉田潮氏である。

「本当に底意地の悪い敵役には、演技力に定評のある木下ほうかや新井浩文を配置している。その意味で、今回の寡黙な役柄は適材適所と言えるかもしれません。まぁ、セリフ回しや演技力はともかく、ビジュアルで魅せる今回のドラマは彼に向いているとは思います。重要なシーンで顔の“どアップ”を多用するベタな演出は、このシリーズのお決まりのパターンですからね」

 確かに、ドラマ中の吉川は終始、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、たまに喋っても“手段を選んでいる余裕などない!”“全責任は私が取る!”といった短いセリフが目立つ。“決め顔”がウリなせいか、ドーランも濃い目だ。

 一方、吉川の抜擢を歓迎するのは、上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。

「NHKの大河ドラマ『天地人』で織田信長を演じた時にも感じましたが、彼は一筋縄でいかない役どころにハマりますね。ミュージシャンとしてのカリスマ性が滲み出て、彼が登場すると画面が引き締まる。中小メーカーの技術力を目の当たりにして心が揺れる難しいシーンも、表情と所作だけで見事に演じてみせました」

 ただ、セリフに難ありとは碓井氏も認めるところ。“残念”な芝居を目立たせないのも演出の手腕なのだ。

「ワイド特集 残念なお知らせがあります!」より

週刊新潮 2015年11月19日号掲載

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