共産党の「手のひら返し」は果たして信じられるのか?

国内 政治 新潮45 2015年11月号掲載

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 9月19日共産党の志位委員長が、戦争法案廃止のために国民連合政府をつくるという大義のもと、これまで一貫して行ってきた選挙協力へ拒否をする姿勢を翻し、来るべき国政選挙での協力を野党各党に呼びかけた。しかし民主党の岡田代表は国民連合政府構想に難色を示し、維新の党は対話自体を拒否、野党一丸となった共闘の見通しはいまだたってはいない。
 共産党がこれまでと態度を一変し、選挙協力を呼びかけたことに驚きの声が上がっている。共産党はこれまで「一貫して○○○してきた日本共産党」と自党を宣伝してきたからこそ、驚きの声もあがるのだが、果たしてそれは本当のことなのだろうか? 2005年に共産党を離党した筆坂秀世元参議院議員が「新潮45 11月号」で「日本共産党の『てのひら返し』」という記事を発表している。

 記事の中で筆坂氏は、共産党は「手のひら返し」を何度もしてきたと述べ、それも瑣末な問題ではなく重要問題でそれが多いと主張する。具体的には、

〈1〉かつては「村山談話」を評価せず
〈2〉かつては「河野談話」を批判
〈3〉日韓国交正常化にも反対

 などの問題について、具体的に共産党機関紙「赤旗」や当時の委員長のコメントなどをとりあげ共産党変遷の歴史を検証している。しかしそのなかでも共産党の姿勢をよくあらわしているのが、現憲法への評価についてだ。

〈4〉そもそもは「改憲政党」だった

 筆坂氏は安保法制反対のデモなどを見てこう感じたと述べる。

《日本共産党議員が、「憲法九条は世界の宝」などと書いたプラカードを持っているのを見ると、正直、「この人たちは、現憲法制定時、政党として唯一反対したのが日本共産党だったということを知らないのではないか。しかも反対の理由が、天皇条項と九条にあったことも知らないのではないか」と思ってしまう。》

 そして憲法制定当時の共産党の対応を振りかえる。

《1946年8月24日、日本共産党を代表して衆議院本会議で現憲法に反対の討論に立った野坂参三は、次のように演説したものである。

「現在の日本にとってこれ(草案第九条)は一個の空文にすぎない。……われわれは、このような平和主義の空文を弄する代わりに、今日の日本にとって相応しい、また実質的な態度をとるべきであると考えるのであります。……要するに当憲法第二章(第九条)は、我が国の自衛権を抛棄して民族の独立を危うくする危険がある。それゆえに我が党は民族独立の為にこの憲法に反対しなければならない」

共産党の志位委員長

 若干の解説を加えると、当時の吉田首相は、自衛権や自衛戦争すら放棄するかのような態度を表明していた。このこともあって、野坂の反対討論がこれを踏まえていたことは間違いない。ところが政府は、その後、「自衛権は憲法九条のもとでもある」と態度変更した。『日本共産党の八十年』によると、「その後、戦争を放棄し、戦力不保持を定めた憲法九条のもとでも自衛権をもっていることは、ひろくみとめられるようになりました。……党は、現在の綱領路線を採択するなかで、憲法の改悪に反対して九条を積極的に擁護」することを確認したとしている。

 確かに、自民党政府の下での憲法改悪には、一貫して反対してきた。だが日本共産党が政権に就いたときには、九条を改正するというのが同党の方針であった。これは1973年11月の第12回党大会で採択された「民主連合政府綱領案」での方針でも明確で、憲法改正によって「最小限の自衛措置をとる」としていた。まごうことなき改憲政党だったのである。

 1985年版『日本共産党の政策』では、「将来の独立・民主の日本において、国民の総意で最小限の自衛措置を講ずる憲法上の措置が取られた場合には、核兵器の保有は認めず、徴兵制は取らず志願制とし、海外派兵は許さないようにします」と明記している。

 当然のことである。自衛権というのは、それを裏づける軍事的措置があって初めて実質的なものになる。それなしに「自衛権があります」と言っても全く無意味だからである。自衛権が認められたから、九条擁護に転換したなどというのは、あとから付け加えた理屈に過ぎない。》

 筆坂氏はこれらの手のひら返しについて、党内でまともな説明がなされてこなかったと述べている。今回の国民連合政府構想についてはどうだろう?志位委員長の行った「手のひら返し」について共産党員の皆さんの意見をお待ちしたい。

※当記事は「新潮45 11月号」掲載「日本共産党の『てのひら返し』」(筆坂秀世)からの抜粋です。

デイリー新潮編集部

筆坂秀世(ふでさか・ひでよ)(元参議院議員)
1948年兵庫県生まれ。銀行勤務を経て25歳で日本共産党の専従活動家に。参議院議員、党政策委員長を務め、05年離党。著書に『日本共産党』など。