マイナンバーでどう変わる 資産の“形成と管理”

ビジネス週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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 10月から番号の通知が始まり、いよいよ本格的に動き出したマイナンバー制度。“行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する社会基盤”と位置付けられた“社会保障・税番号”だが、気になるのは、個人資産の形成や管理に与える影響だ。

 例えば、こんなケース。夫がサラリーマンで、妻はパートで働いている。妻の年収は90万円。これだと、妻は住民税や年金、健康保険料は支払わなくて済む。ところが他に短期のアルバイトで15万円の収入があり、そのアルバイト先が源泉徴収票や支払調書を作成していなかったら……。

「マイナンバー制度導入後は、アルバイト先もナンバー入りの源泉徴収票や支払調書を作らなければならない。すると妻の収入は105万円となり、“103万円の壁”を突破して配偶者控除が受けられず、夫の税金が上がってしまうのです」(経済ジャーナリスト)

 さらに妻の収入が130万円を超えると、妻は自分で年金保険料や健康保険料を払わなければならなくなる。資産を増やすための共働きが、かえって出費増を招きかねないのだ。

 このケースは現行でも同じだが、ただマイナンバーによってより厳格になるのだ。だがそれでも、

「きちんと申告し納税している、まっとうな人にとっては、マイナンバーは関係ないと言っていい。現行制度で税の網を逃れている人は危ないでしょう」

 と言うのは、マイナンバーに詳しい元国税調査官でライターの大村大次郎氏だ。

富裕層は丸裸に?

「株投資やFXをしている人は、証券会社に口座を持ち、多くは源泉分離課税を選択しているはず。この場合、証券会社も調書を提出しており、マイナンバーの影響はありません」(同)

 ではサラリーマンやOLの副業の場合はどうか。税理士の井上俊彦氏は言う。

「最大の問題は“副業バレ”です。副業収入を確定申告して“普通徴収”を選び、自分で住民税を納めれば問題はありませんが、“特別徴収”にすると、住民税額が本業の会社に通告されてバレる。副業禁止の就業規則に抵触すると最悪の場合、解雇もありえます。しかも東京都は今、大々的に“特別徴収推進キャンペーン”を行っているのです」

 最初の例と同様、マイナンバーは副業の源泉徴収や支払調書に関係してくる。“副業バレ”が怖くて確定申告をせず、ダンマリを決め込むこともできなくなる。

「でも逆に税金が還付されることもありますので、確定申告はしたほうがいい」(同)

 一方、資産形成よりも資産管理で大きな影響を受けるのは、いわゆる富裕層だ。

「2018年には、任意ですが、マイナンバーと銀行口座の紐づけが決まっており、さらに政府は、21年の義務化を考えています。富裕層の資産に課税したいのです」(経済部記者)

 家族や他人名義の口座を使った資産隠しを抑止。さらに海外へと脱出する“資産フライト”については、

「国外に保有する5000万円以上の資産の申告を義務付ける“国外財産調書制度”や、1億円以上の株式などの金融資産の保有者が海外に移住する場合、その含み益に課税する“出国税”がある。富裕層は資産を丸裸にされた上、しっかりと網がかけられる」(同)

 これに対し、

「無記名の資産である金やプラチナに関心が集まっています。貴金属業者によれば“店頭では100グラムの金地金が人気。500グラムだと売却時に200万円を超える可能性があり、業者から税務署に支払調書を提出されるおそれがある”といいます。これだけが理由ではありませんが、10月に入ってから金やプラチナの価格が上昇している」(先のジャーナリスト)

 だが、

「金は昔から脱税の道具に使われることが多い。国税も当然、対策は持っています」(大村氏)

 増やすも守るも心して。