自動車関税は15年動かない“まやかし”TPP

企業・業界週刊新潮 2015年10月22日号掲載

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 ついに、世界最大の“自由貿易圏”が産声を上げた。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は10月5日、加盟12カ国の閣僚会議で“大筋合意”に達したが、その中身を知った自動車業界の関係者たちは失望の色を隠さなかったのである。

 自動車分野の主な合意内容は、米国が完成車の関税2・5%を段階的に撤廃し、部品は8割以上で関税2・5%の即時撤廃。これに甘利明TPP担当相は“一定の成果が出た”と胸を張ったが、

「関税撤廃は、“まやかし”でしかありません」

 こう憤るのは、自動車部品メーカーの幹部だ。

「完成車の関税はTPP発効の15年目から段階的に実施され、完全撤廃は25年目。つまり、15年間は何も変わらないのです」

 ライバルの韓国は米国との2国間協議で来年からの完全撤廃が決まっており、大きく水を開けられた格好だ。また、部品も“自由貿易”には程遠いという。経済誌記者の解説では、

「日本から米国へ輸出する自動車部品は年間約2兆円。この8割で関税が撤廃されるのは大きな意味を持つが、“原産地規則”という難題が残っています」

 原産地規則は、商品を製造する上でTPP参加国から一定の比率以上で原材料を調達しなければ、関税がかかるというルールだ。

「自動車部品の場合、TPP域外から原材料を調達して日本で加工すれば非課税だが、当然、部品自体を調達すると関税対象になる。日本の自動車メーカーは、部品の多くを中国やタイ、インドネシアなど人件費の安い非加盟国で生産しています。関税撤廃のために、工場を参加国に移転することは考え難い」(同)

“まやかし”どころか、“まぼろし”で終わることにならないか。