悲願達成でも「安倍総理」に立ちはだかる「女難人事」の壁

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 9月19日午前2時17分、安倍晋三総理(61)は官邸の総理執務室で、参院での安保法案採決の様子をモニター越しに見守っていた。法案が可決すると、執務室内に張りつめていた空気を切り裂くように拍手が沸き起こり、総理は傍らの菅義偉官房長官と握手を交わした。悲願達成の瞬間であった。しかし、禍福は糾(あざな)える縄の如しで、休む間もなく……。

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勝者も無傷ではいられなかった

「積極的平和外交を推進し、万が一への備えに万全を期していきたいと思います」

 菅氏と手を握り合った6分後、安倍総理は記者団にこう決意のほどを語った。その表情には、安堵とともに疲労が滲(にじ)み出ていた。それは睡眠不足だけが原因ではなかったと、大手紙の政治部デスクは読み解く。

「安倍総理にとっての『鬼門』が、すぐに待ち受けていますからね」

 10月上旬に予定されている内閣改造および自民党役員人事。確かに、第1次政権時代から、安倍総理にとって人事は頭痛の種だった。

「現時点では、官房長官や財務相といった重要閣僚、また幹事長や総務会長ら党幹部も、ほとんど留任の見込みです。去年9月の内閣改造で、小渕優子(経産相)や松島みどり(法相)に、次々とスキャンダルが発覚して『辞任ドミノ』が起きました。その二の舞を演じたくない安倍総理は、極力、人事を動かしたくないわけです」(同)

 さはさりながら、安倍政権は女性の活躍推進を掲げている以上、新たに女性議員を要職に起用しなければ格好がつかないとの事情も抱えている。そこで目下、注目されているのが稲田朋美政調会長(56)だ。

「まだ当選4回ながら、同じタカ派として安倍総理の覚えがめでたい彼女を経産相に抜擢する案が浮上しています。安倍総理の持論は、経産官僚を上手く使って財務省を抑え込むというもので、事実、彼自身が経産省出身の今井尚哉(たかや)氏を政務秘書官に起用している。稲田さんに『帝王学』を授けるべく、彼女を経産相に就けるのではないかと見られているんです」(同)

 あるいは、女性初となる官房副長官への起用も囁かれている稲田氏だが、泥臭い仕事の経験がなく、「雑巾がけ」が足りない彼女には逆風も吹いていて、

「7月末に軽井沢で行われた、稲田さんが所属する細田派の夏の研修会で、細田博之会長が『(男性は女性の後回しという)After Ladyの精神も少し修正しなきゃならん』と、“稲田重用”に釘を刺すかのような発言をしています」(細田派関係者)

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が解説する。

「女性議員同士のライバル意識は非常に強く、特定の人を依怙贔屓(えこひいき)すると、他の人から恨みを買ってしまいます。そもそも、他党と比べても自民党の女性議員の割合は少ないこともあり、誰を女性閣僚に登用しても摩擦が起きるでしょう」

 野田聖子代議士の「反乱」に続く、稲田氏を巡る「嫉妬」……。安倍総理に女難の相あり?

【特集】「狂躁『安保法制』の後遺症」より

週刊新潮 2015年10月1日号掲載

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