広域暴力団「住吉会芝浦事務所」に向こう見ずな強盗で盗んだ物品のお値段

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 もし、強盗犯にアンケートを取ったら、間違っても入りたくないのがヤクザの事務所だろう。何しろ、相手はケンカ上等の荒くれ者、逆襲されるどころか命あっての物種なのだ。ところが、よりにもよって広域暴力団「住吉会」の事務所に押し入った賊がいたという。そこで奪い取られた“お宝”とは。

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強盗に入られた住吉会芝浦事務所

 警察庁が発表している〈平成26年の暴力団情勢〉によると、住吉会に所属する暴力団員は3400人、準構成員も入れると8500人となっている。本部は東京・赤坂にあるが、芝浦にも立派なビルを構えている。

 暴力団を取り締まる警視庁組織犯罪対策部の担当者によると、

「このビルは半地下のスペースを入れて5階建て、総面積で170坪ほどの広さです。住吉会という組織は、もともと芝浦が発祥の地だったことから、将来ここに本部を移すことも考えて福田晴瞭前会長が建てたと聞いています。以前は“芝浦本部”とも呼ばれていて、中に入ると1~2階が事務スペース、3階が会長室で4~5階が住居となっている。もちろん、いつ抗争があってもいいように組員が24時間常駐していますよ」

 訪れてみると、一見、暴力団の事務所とは分からないような瀟洒なビルだ。だが、狭い入り口は電子ロックで固く施錠され、監視カメラも数台設置されている。やっぱり住吉会の事務所だけあって物騒な雰囲気なのだ。

 そんな怖いビルに強盗が押し入ったのは、5月中旬のこと。

■猛禽類の剥製

 先の警視庁の担当者が言う。

「時間は明け方5時ごろだったそうです。なぜか犯人は電子ロックのナンバーを知っており、そのまま開錠して玄関から入ってきた。事務所の奥には留守番の組員がいたのですが、堂々と賊が入って来たことに虚を突かれてしまったようです」

 犯人の出で立ちは野球帽に、サングラス姿で、マスクはしていなかった。もちろん組員は抵抗したものの、刃物を突き付けられ、結局、両手両足をグルグル巻きにされてしまったという。

「事務所の棚には、記念品などの品物が所狭しと置いてあったのですが、強盗は1階から3階まで時間をかけて探して回ったようです。しかし、現金などは見つけられず、持ち去ったのは、猛禽類の剥製と記念の盾など数点だけでした」(同)

 売れば高い値がつくと思ったのだろうか、剥製は高さ80センチぐらいの立派なもの。住吉会の関係者によると、10年ほど前に他の暴力団組長から記念に贈られたものだったとか。

 果たして価値のあるものなのだろうか。

「剥製の価値は鳥の種類と表現力で決まります。なかではイヌワシが一番高くて今なら80万円はする。ただ、剥製は品質を保つのが難しくて、手入れをしていないと大きく値下がりしてしまいます」(都内の剥製業者)

 そこで、ネットオークションを探してみると、大ぶりのイヌワシの剥製が3万9800円。暴力団事務所に押し入るリスクを考えれば、とても釣り合う“獲物”ではない。

 ちなみに、犯人は捕まっていないが、所轄の三田警察署にも被害届が出されていない幻の強盗事件である。

「ワイド特集 祇園精舎の鐘の声」より

週刊新潮 2015年9月10号掲載

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