ニッカが困った「余市」“売れ過ぎ”始末

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 最終回から2カ月余り。NHK連続テレビ小説「マッサン」人気の、思わぬ置き土産だ。

 主人公のモデルとなった竹鶴政孝が創業したニッカウヰスキー。その2大ブランドである「余市」「宮城峡」の長期熟成酒“10年”“12年”“15年”が、商品棚から姿を消してしまうという。正式発表を前に卸問屋や一部のバーには話が伝わり、噂を聞きつけた洋酒好きの中にはボトルキープを急ぐムキもある。当のニッカに尋ねると――。

「8月末で『余市』と『宮城峡』の現行ラインナップは終売させていただきます。おかげさまで非常に好調な売れ行きで、このままでは原酒が底を突いてしまうため、9月から新商品を販売予定です。ブランド名がなくなるわけではございません」(ニッカ親会社のアサヒグループホールディングス広報部門)

 今年1月から4月までにニッカが販売した国産ウィスキーの累計は、対前年比で157%。ビールなどの醸造酒であれば需要に応じて短期間に増産が可能だが、ウィスキーの原酒は品質を向上させるために、最低でも数年間は寝かせておく必要がある。

 特に、今回生産を中止する高級熟成酒は、10年以上貯蔵されたモルト原酒をブレンドすることから、供給までに長い時間を要してしまうのだ。

「80年代にピークを迎えた国内のウィスキー消費量は減少の一途を辿り、市場規模は往時の5分の1に縮小しました。ところが、2008年からハイボールブームが起こり、昨年の『マッサン』放映で人気に火がついた。今、我々が楽しんでいる長期熟成のウィスキーは“冬の時代”に仕込まれたモノですから、圧倒的な需要に対応できないのです」(経済誌記者)

 10年、20年後には再びブームが去っているとも限らず、酒造メーカー各社の舵取りは難しい。マッサンなら、いったいどんな決断を下すだろう。

週刊新潮 2015年6月11日号掲載

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