“女装”して逃げ出す「イスラム国」兵士の屁理屈

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「シリアとイラクにおける過激派『イスラム国』の勢いは、一時期よりも衰えた」

 3月22日、CIAのブレナン長官は、フォックステレビの番組でこう述べている。実際、有志連合の空爆やイラク軍の地上戦が効果を上げ、『イスラム国』は昨夏に掌握したイラク北部の都市バイジから撤退を開始。

 しかし、その混乱の陰で展開される奇天烈な“脱走作戦”を知れば、長官も唖然とするに違いない。

「戦地から逃げ出す『イスラム国』の兵士のなかに、女性に成りすました者が紛れ込んでいたのです」

 と語るのは、外信部記者。ブルカと呼ばれるベールを被って武器を隠そうとする、穏健な女装兵のみに非ず。白粉を塗り、口紅をひき、胸パッドまで入れてめかしこむ、本格派“オネエ兵”すら散見されたという。

「もっとも、それで敵の目をごまかして、首尾よく逃げ果(おお)せた者ばかりではありません。ある兵士は急いで女装したため髭を剃り忘れており、イラク軍に性別を見破られて捕まった」(同)

 血みどろの戦場で起きたとは信じ難い、まるでコントのような出来事だが、お笑い草になることを覚悟の上で女装を決め込むのにもそれなりの根拠がある。

「彼らが行動規範にする『シャーリア(イスラム法)』では、女性は戦いから守られねばならない存在だとされています。イラク兵も同じくイスラム教徒ですから、女性を装えば撃たれないと計算したものと思われる」(同)

 だが、ここで気になることが一点。本来イスラム教は、性的マイノリティーに不寛容な宗教ではなかったか。現代イスラム研究センターの宮田律氏が解説する。

「確かにイスラム圏は欧米よりも格段に同性愛タブーが強く、サウジアラビアのような戒律に厳しい国では、ゲイだと露見しただけで死刑になってしまうほどです」

 コーランにある、預言者ロトの《女の代わりに男に対して欲情を催すとは。誠に言語道断な奴》との言葉が、その根拠とされている。

「ならば原理主義者たる『イスラム国』兵士にとっては女装も倒錯行為に外ならず、許されるはずはないのに、生存のため正当化されている。ダブルスタンダードとの謗(そし)りは免れません」(同)

 神の名のもとでの闘争なのだから、教えに逆らって逃走しちゃ駄目でしょう。

週刊新潮 2015年4月2日号掲載

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