抱っこひも「エルゴ」は、なぜ偽造品が多発したのか。

社会

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 先日、抱っこひものブランド「エルゴベビー」で、偽造品が大量に売られているとの情報が報じられた。「抱っこひもなんてどれも似たようなもんだろ。たかが抱っこひもで何で偽造品が多発するんだ?」と感じた人も多いかもしれないが、大きな間違いだ。エルゴは、ここ数年で日本の抱っこひも市場を事実上独占するに至ったスグレモノで、子育て世代なら知らぬ者のいない圧倒的なブランドだからである。

 いま乳幼児を抱えている子育て世代を「エルゴベビージェネレーション」と定義している本がある。辻中俊樹氏と櫻井光行氏が書いた『マーケティングの嘘 団塊シニアと子育てママの真実』だ。

 同書によると、エルゴが日本で知られるようになったのが2005年頃からで、本格的に日本市場で使われるようになったのが2008年からだと言う。そもそも、この商品がハワイで誕生したのが2003年だから、商品そのものの歴史がまだ10年ちょっと。ここ6~7年の子育て世代しか知らない商品なのである。

 エルゴが圧倒的に支持されるようになったのは、その機能性が理由だ。まず、肩ストラップとウエストのベルトで赤ちゃんの体重を支える。肩ストラップは太めなので、肩がこらない。このストラップは背中側のベルトでカチッと止めるので、ずれない。赤ちゃんが安定して両手が自由に使え、着脱も一人で簡単にできる。立体縫製の袋状カバーで赤ちゃんを包み込み、フードもついているので、インファントインサートと呼ばれる立体のおくるみを使えば首のすわっていない赤ちゃんでも縦抱きできる。こうした工夫は、アウトドア用品の技術を応用したものだという。

 子育て商品の市場では、親の商品選びは真剣である。同書によると、エルゴ以外にも、机に直接とりつけられるイングリッシーナの椅子や、100円ショップ「セリア」のスプーンとフォーク、ちょっと余裕が出てきたらル・クルーゼの鍋など、最近の子育て世代に支持されている商品は、ここ数年で一般的になったものばかり。辻中氏はこれらのヒットの理由を、2歳未満の子供を育てている層は5年もすれば構成している人々がそっくり入れ替わる、そのため新規参入企業であっても商品のメリットを的確に伝えることができれば、売上を伸ばすことができるからだ、と分析する。

 現在進行形の子育て世代である「エルゴベビージェネレーション」の傾向として、一度「これは良い」と認められた商品は、ネットやSNSなどの口コミによってあっという間に市場を席巻するし、一度「これはダメ」とされた商品はあっという間に支持を失う。「その象徴ともいうべき商品がエルゴの抱っこひも」(辻中氏)だった。そしてその圧倒的なニーズを偽造業者に突かれたというわけだ。

デイリー新潮編集部