「将棋界の魔太郎」と呼ばれて 「渡辺明」二冠ぬいぐるみ100体の家

国内 社会 週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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 こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か――。1970年代にヒットしたホラー漫画『魔太郎がくる!!』。小誌コラムでお馴染みの棋士・渡辺明二冠(30)は、主人公に容姿が似ていることで、“将棋界の魔太郎”と呼ばれている。厳しい指し手と“毒舌”に恐れをなすベテラン棋士も少なくないが、普段は“ぬいぐるみ”に囲まれて過ごしているという。

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 2014年の将棋界の一大ニュースは、糸谷哲郎八段が26歳の若さで森内俊之竜王(44)を破り、タイトルを奪取したことに他ならない。だが、10年前、渡辺二冠は糸谷八段より6歳も若くして竜王位のタイトルを奪取していたのだ。

“将棋界の魔太郎”は棋力以外にも、歯に衣着せぬ発言でベテラン棋士たちを恐れ戦(おのの)かせている。例えば、22歳の時にトップ棋士10人が属するA級のベテランに対して、

「若手にメールや電話で戦術を聞くのは、A級棋士としての自覚に欠けると思う。そういう人たちの昔の棋譜は並べる気も起きませんし、負けたくないです」

 ベテランにも物怖じしない渡辺二冠が、競馬とサッカー観戦をこよなく愛していることは小誌でもすでに披露している。が、意外に知られていないのは“ぬいぐるみ”集めだ。

「ぬいぐるみが好きになったきっかけは、母親が集めていたからです」

 そう語るのは、渡辺二冠ご本人だ。

「今、自宅のリビングに飾ってあるのは、王将戦の就位式で記念品にもらった映画『となりのトトロ』に出てくるネコバスなど。大きい物が10体で、小さなのが40体くらいですかね」

 実家にも50体ほどあり、お気に入りは子供の頃から持っている犬のぬいぐるみだとか。家族は、どう考えているのか。

「ぬいぐるみに関心のない妻は、これ以上増えるのを嫌がっています。時々、彼女はブログで、私がぬいぐるみと遊ぶ様子をからかうようなことを書いていますが、気にしていません」

■精神的に安定

 ちなみに、10歳になる長男と一緒に、ぬいぐるみで遊んでいるので、家庭内で肩身の狭い思いをしたことはないというのだが、

「ぬいぐるみが大好きというと、驚かれることがあります。私の生活は“勝敗”で成り立っているので、世間の人から見るとギャップがあるのでしょうか。自分は凄みがあって話しかけるのも憚(はばか)られるような“昭和の勝負師タイプ”ではありませんから、違和感はないと思うのですがね。え、大の大人は、ぬいぐるみ遊びをしない? そんなことはないでしょう」

 で、将棋にはどんな影響があるのか。

「さすがに、対局にぬいぐるみを連れて行くことはありません。ただ、3泊4日のタイトル戦は家を長く空けるので、本当は1体くらい連れて行きたいと思うことはありますが……。ぬいぐるみは、普段から私を楽しませてくれています。一緒に遊ぶと気分転換になり、精神的に安定するのです。そういう意味では、将棋にもいい影響を与えてくれているのかもしれません」

 2013年に、竜王を失冠した渡辺二冠。その無念を“は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か”。

「ワイド特集 羊の皮を被った狼 虎の皮を着た羊」より