中井貴一「自分の映画を試写では観ない」――鼎談 広末涼子×浅田次郎×中井貴一(3)

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 9月20日公開された映画『柘榴坂の仇討(ざくろざかのあだうち)』。原作者・浅田次郎さん、主演の中井貴一さん、その妻を演じた広末涼子さん。広末さんが号泣していた試写会。中井さんが観なかったワケとは。

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浅田:中井さんは、試写は観ないそうですね?

中井:この映画に限らずなんですが、公開されてから、お金を払って劇場で観ることにしています。試写を観てしまうと、どうしても演技の反省点が先に立って、キャンペーン中に「ぜひ観てください」と言いにくくなるんです。取材に対して「あそこは失敗した」「もっとこう演じればよかった」という話ばかりでは、宣伝的に逆効果ですからね。主演した『壬生(みぶ)義士伝』を観に行った時のことですが、60代くらいの男性がお弁当持参で映画館に来て、それを食べ、映画を観て大泣きして帰っていく。「これも映画の見方なんだな」と思いました。実はそのおじさんには中井だとバレて少しお話をしたんですが、この作品を観るのは「5回目」だと言う。「でも、毎回同じだと思ったことはない」と仰ってました。

浅田:良い映画は、繰り返して観ると、新しい発見や感動があるからね。そのおじさんも、『壬生義士伝』だからこそ、5回も観たんでしょう。

中井:たしかに、「本当はあんまり映画観ないです」とも仰ってました(笑)。

浅田:僕も、自分の昔の作品をちょくちょく読み直すんです。今の自分に欠けているものを昔の自分が持っている場合もあるし、作家の仕事は、古いものに敬意を払いながら、その上に新しいものを積み重ねていく仕事であるべきだと思うので。そうすると、自分の書いたものでも、読み返しながら「発見」することがあるんですよ。そこは映画も小説も同じかもしれない。『ローマの休日』なんか20回くらい観ているけど、観るたびに違うものにみえる。

デイリー新潮編集部

週刊新潮 2014年9月18日菊咲月増大号掲載

「特別読物 映画公開記念! 鼎談 広末涼子×浅田次郎×中井貴一「柘榴坂の仇討」に刻まれた日本人のDNA」より

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