初めて露わになる近代日本のせつなさ/『愛と暴力の戦後とその後』

社会

 なんとも官能的にして知的な、歴史への問いかけの書である。日本という国を対象にして、著者の過敏な肌がざわめき、五感が全開となる。現実の目前の風景が退いたかと思うと、そこに数十年前の空気が濃密に漂いだす。死者たちと生者たちの声にならない沈黙を、著者は全身全霊で聴き取ろうとしている。『愛と暴力の戦後とその後』という自国の近現代の歴史のせつなさが、読む者の肌から内臓へと徐々に滲入してくる。これは稀有な体験ではないだろうか。

 本書は長編小説『東京プリズン』で司馬遼太郎賞を受賞した作家・赤坂真理による、向こう見ずといっていい、自身と自国の来歴を確認する試みの記録である。

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