週刊朝日の「ユヅ、がんばったね。」表紙にクレーム

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誰目線なのか

 羽生結弦選手の連覇を受けて、その雄姿を大々的に表紙にフィーチャーした雑誌が店頭に並んでいる。いまや国民的英雄と言っても過言ではないのだから当然なのだが、そんな中で「気持ち悪い」と一部ファンの間で不興を買っているのが「週刊朝日」だ。
 

 オリンピックでの羽生選手を大きく扱っているのは、同日発売の「サンデー毎日」と同じだが、問題はそこに添えられたコピー。
「ユヅ、がんばったね。」

 一体これは誰の台詞なのか。編集部? 編集長? それにしても何様なのか? というあたりが評判の悪さの理由のようだ。ツイッターでは「吐きそう」という辛辣なコメントまで見られる。

 羽生選手を長年応援してきたファンも「世界のフィギュアスケートを牽引してきた選手に対して、あまりにも敬意が感じられない」と憤る。

 いかに美青年であろうとも、言うまでもなく羽生選手は、すでに23歳の立派な成人男子であって、長年フィギュア界の頂点で活躍してきた超一流選手。今回の五輪では男子フィギュア史上66年ぶりの連覇を成し遂げた。
 もちろん、ファンの中には「ユヅ」という愛称を使う人もいるのだろうが、そこに加えて「がんばったね。」というタメ口での語りかけには、かなり「上から目線」あるいは勝手な「母親目線」という印象は否めない。しかし「週刊朝日」は羽生選手の育ての親でもタニマチでもない。

職場に置き換えてみたらどうか

 昨今の職場では相手をファーストネームで呼ぶことはかなりリスキーだ。男性の部長が若手女性社員に対して、
「サラ、がんばったね」
などと言った日には、陰口で済めばマシなほうで、悪ければセクハラとして問題化するだろう。
 また、女性管理職が部下の男性社員に対して、
「ユヅル、がんばったね」
などと言ったら、周囲は「どういう関係?」と困惑すること請け合いである。

 ひょっとすると進歩的で知られる朝日新聞社だけに、日常業務において、こういう呼び方もアリとなっているのかもしれないが、一般社会において、タメ口は往々にしてトラブルを招きがちだ。

 フリーアナウンサーの梶原しげるさんは、著書『すべらない敬語』の中で「敬語を使わない方が、友達、仲間、身内感覚を味わえる」と“タメ口”のメリットを述べながらも、日本人は初対面でタメ口をきく人に嫌悪感を覚える国民性だと語っている。逆に言えば、とりあえず敬語を使っておけば、「炎上」の可能性は下がるということだ。

「日本語では、相手が目上であるか、同等であるか、目下であるか、その相対的関係により、敬語を使うのか、または非敬語、タメ語を使うのか、場面に応じて、自在に使い分ける事が求められます。
敬語モードで話すメリットは、相手や話題の対象と距離を置くことで、馴れ馴れしすぎる感じを排除し、その結果、敬いの気持ちや、丁重さ、上品さを表すことが出来ることです。敬語を場や相手に応じ適切に使用する事で、豊かなコミュニケーションを築けます」(『すべらない敬語』より)

 多分、週刊朝日の側に悪気はなかったのだろう。多くの国民と同様、羽生選手の快挙にテンションが上がりまくったゆえに飛び出した「タメ口」だったのだろう。しかし、これが結果として「馴れ馴れしすぎる感じ」として伝わったゆえに、ブーイングを浴びることとなったのである。

デイリー新潮編集部

2018年2月23日掲載

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