売上の5割超を依存…特許切れ間近“オプジーボの後釜”は育つか 小野薬品の今後を占う2つの論点

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 販売開始前に比べ売上は約4倍に成長、現在も5割超の売上を担う小野薬品工業のがん免疫療法薬「オプジーボ」が、間もなく特許切れを迎える。危機を前にして同社が打つ手は主に2つ。“後釜”となる新薬開発と、グローバル事業の強化だ。周到な対策が練られているように見えるが、課題とリスクも決して少なくはない。

売上の5割を占めるオプジーボが特許切れへ

 1717年創業の老舗製薬企業・小野薬品工業。がん免疫療法薬「オプジーボ」の開発で世界に名を馳せたが、同薬の「パテントクリフ(特許の崖)」が迫っており、業績の悪化が懸念されている。

 パテントクリフとは、主力医薬品が特許切れによって独占販売期間を満了し、価格の安い後発薬に市場を奪われて売り上げが急減する現象を指す。その様は文字通り崖から落ちるようなもので、製薬企業にとって経営の大きなリスクであり、宿命でもある。

 オプジーボは、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授の研究をもとに小野と米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した。14年に世界に先駆けて日本で発売され、現在では欧米を含む世界65カ国以上で承認されている。販売は小野が日本、韓国、台湾を担当。それ以外の国・地域ではBMSが販売し、小野は売り上げに応じたロイヤリティを受け取っている。

 オプジーボは当初、悪性黒色腫という希少な皮膚がんを対象に承認され、その後、肺がん、胃がん、大腸がんなど患者数の多いがんに拡大。25年度の小野による日韓台での売上収益は1285億円、25年のBMSによる売り上げは100億4900万ドル(約1兆5800億円)に上った。

 この間、小野の業績は大きく拡大した。オプジーボ発売直前の13年度は売上収益1432億円・営業利益264億円だったが、25年度はそれぞれ5158億円・922億円に達した。

 その原動力となったのがまさにオプジーボだが、依存度が高い分、パテントクリフのリスクも大きい。自社販売の売り上げとロイヤリティ収入を合わせたオプジーボ関連の25年度の収益は2803億円で、売上収益全体の54%を占める。同薬の特許は2030年前後に主要市場である米国、欧州、日本で相次いで切れ、売り上げとロイヤリティ収入の減少に見舞われる。

後釜の新薬開発

「オプジーボクリフ」に小野も手をこまねいているわけではない。大きく2つの手を打っている。1つはオプジーボに続く新薬の開発で、もう1つはグローバル展開だ。

 新薬開発では、開発の後期段階に差し掛かる2つの自社創製新薬に期待をかける。抗がん剤「ONO-4578」は、3段階ある臨床試験の2段階目の試験(フェーズ2試験)で、オプジーボとの併用により胃がん患者の生存期間を延長する良好な結果が示された。

 もう1つは、指定難病の神経変性疾患・多系統萎縮症の治療薬「ONO-2808」だ。多系統萎縮症は、α-シヌクレインというタンパクが脳に異常に蓄積し、脳の神経細胞が徐々に失われていく疾患で、歩行困難や自律神経障害などを引き起こす。現時点では確立された治療法は存在しない。フェーズ2試験では、プラセボ(偽薬)と比べて疾患の進行を抑制する傾向が認められた。

 いずれも26年度中に最終段階の試験(フェーズ3試験)を開始し、29年度以降に日米欧で承認を取得する計画。両剤ともピーク時にグローバルで年間1000億円以上の売り上げが期待されている。米国企業から全世界の開発・商業化権を取得した血液がん治療薬「ONO-0530」も29年度以降の承認取得を見込んでおり、ピーク時に500~1000億円の売り上げを予想している。

パイプラインは豊富でも……

 小野のパイプライン(開発中の新薬候補)は豊富だ。今年7月時点での集計では国内だけで35のプロジェクトが進められており、その数は内資では大手の第一三共に次いで多い。新規有効成分の数は内資トップだ。これらを順調に発売できれば、オプジーボクリフを克服して持続的な成長軌道に乗ることができそうだが、医薬品に開発失敗のリスクはつきもの。特に小野が力を入れるがんや精神・神経といった領域は開発の難易度が高く、最終治験で有効性を示せず開発中止に追い込まれることも珍しくない。多系統萎縮症と同じく脳内に特定のタンパク質が異常に蓄積することで起こるアルツハイマー病では、幾多の新薬候補が治験に失敗した過去がある。

「パイプラインが豊富」という事実と「オプジーボの穴を埋められる確度」は別の話だ。計画が1~2年ずれるだけでも、収益に“谷”は生じかねない。マーケットの評価もなお定まっていないのである。

〈グローバル事業をはじめとした、新薬以外の“光明”と“リスク、同業他社との比較”などについて、新潮QUEで詳述している〉

前田雄樹(まえだ ゆうき)
製薬業界専門ニュースサイト「AnswersNews」 編集長。全国紙から医療・製薬専門紙に移り、記者として製薬企業や中央省庁等を取材。2016年にAnswersNewsを立ち上げ、以来編集長を務める。

デイリー新潮編集部

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