不正アクセスで個人情報を抜き取られた被害者が一転、犯罪の共犯者に…サイバー攻撃から個人情報を守るためにあたながやれること
情報化社会とは、かくも脆弱である。先月発覚したカーシェアリングサービス「タイムズカー」の顧客データ流出では、漏洩したアカウント数が約660万件、免許証の画像など本人確認書類に関しては約160万件にものぼることが判明した。その後も不正アクセスによる企業の被害は相次いで判明、今や底なしの様相を呈している。不安のるつぼと化した巷では目下、疑心暗鬼が募るばかり──。そんな「個人情報丸裸社会」において我々は、いかに身を守ればいいのだろうか。
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今回、自身の情報が漏れてしまった「タイムズカー」会員である都内の40代男性会社員が言う。
「私にはお詫びのメールは届きませんでしたが、心配だったのでタイムズに電話をして確認したところ、自分の個人情報も流出しているとの回答がありました。ただし、問題になっている免許証の情報まで含まれているかは分からないとのこと。先方は『確認して後日回答いたします』と言ったのですが、そこで止まっている状態です」
そう明かしながら、
「その後、どのような対応を取るのか、あるいは補償をどうするのかといった話は現在までありません。会員登録の際にはクレジットカードの情報も必要だったのですが、こちらはセキュリティコードもあって流出は免れたようです。ただ電話番号やアドレスは漏れた可能性がある。今後、不審な電話が増えないか心配しています」(同)
専門家も「目的が分からず不気味」と
タイムズカーの事案の発覚以降も、他企業の被害が次々判明した。たとえば焼肉チェーン「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションは、アプリの会員管理システムに不正アクセスされ、約1078万件の情報が流出したと10月5日にリリース。またローソンは8日、アカウントサービスからおよそ215万件の個人情報が漏洩したと発表した。さらに9日、今度はJR東日本が、「えきねっと」「大人の休日倶楽部」や「ビューカード」の会員情報など約609万件が流出した可能性があると明かしたのだった。
一体、サイバー空間で何が起きているのか。
一般社団法人「日本ハッカー協会」の杉浦隆幸代表理事は、
「今回の一連の不正アクセスの中には、従来の『ランサムウェア(盗んだ情報を“人質”に身代金を要求する)攻撃』ではないケースもみられます。単に情報を盗むだけの攻撃で、誰が何の目的で行なっているのかわからない。実に不気味です」
そう前置きしながら、
「サイバー攻撃には、もっぱらAIが使われているとみられますが、ここ数ヵ月間で攻撃までの『準備期間』が短くなっている印象です。ネットへの侵入が広く同時に行なわれており、対象となるシステムに脆弱性が見つかれば、すかさず入り込む。“犯人”は、AIによる攻撃の自動化や効率化のサイクルを回すことに成功していると言えます」
AIの進歩・成長の「弊害」が、こうしたところにも影を落としているというわけだ。
恐ろしい「闇サイト」「知らぬ間に共犯者」
サイバーセキュリティ対策を手掛ける「レオンテクノロジー」の守井浩司代表によれば、
「抜き取られた情報が、これまで出回っていない新しい個人情報であれば、ネット上の『闇サイト』などのブラックマーケットで売買される可能性があります」
闇サイトは通常の検索エンジンでは見つけにくく、かつ匿名性を高める仕掛けになっており、サイバー攻撃にも耐えうるとされる。取引には暗号資産が使われることもあり、資金の流れを追うのは困難だという。売買された情報は、別の犯罪に利用されていく。
サイバーセキュリティに詳しい神戸大学の森井昌克名誉教授が言う。
「免許証の画像が漏洩すれば、顔写真を加工するなどして本人に成りすます者が出てきます。現在は銀行口座やクレジットカードを作ったり、消費者金融から借金したりといった手続きもネット上で本人確認書類の画像を送ればできるので危険です。被害者に成りすましてカードを作り、商品を購入して転売する。結果、代金請求が被害者に届くことになるのです」
さらに続けて、
「被害者名義で作られた銀行口座が、特殊詐欺などの犯罪に悪用される可能性もある。犯人らが直接金銭をやり取りせずに口座を経由させ、そこで名前が使われれば、知らぬ間に被害者が一転、犯罪の共犯者にされてしまいます」
かように危険に満ち溢れた社会に、我々は身を委ねているのだ。
新潮QUEで配信中の記事【「タイムズカー」660万件、「JR東」609万件 他人事では済まされない「不正アクセス急増時代」のサバイバル術】では、「守りに弱い」というAIの特徴や、こうしたサイバー攻撃に晒されるリスクを減らすための日常生活における工夫について、詳しく報じている。


