なぜ「クライマックスシリーズは儲かる」のか? いまだ賛否ある一方、球団側の本音はシーズン優勝と2位のチームだけが手にできる「臨時収入」の機会
高騰する年俸
バブルがはじけて以降、日本社会は長年にわたり経済的に苦しみ、一般企業の給与はほとんど上がらない状況が続いてきました。ところが、プロ野球界はFA制度導入や、複数年契約をする選手が出てきたことで、選手の年俸は異常なまでの右肩上がりとなりました。
私がこの世界に入った1990年代初頭は「1000万プレーヤー」という言葉があって、1000万円を超える年俸を手にする選手は、ごく限られた人数でした。つまり年俸1000万円もらう選手は「一流」とされる時代だったのです。
1987年に中日に移籍して、日本人初の1億円プレーヤーになった落合博満氏(72)のように、例外的に巨額の年俸を得ていた選手はいましたが、当時はごく限定的で、大半の選手は1000万プレーヤーを夢見て日々、汗を流していました。
しかし、落合氏が開けた「1億円」という大台の扉は、プロ野球界に大きな影響を与えていたのです。当時オリックス所属だったイチロー氏(52)が2000年に5億円を突破、02年には巨人の松井秀喜氏(52)が、当時の野手最高額となる6億円を突破するなど、「一流」の基準は1桁上がって「1億円プレーヤー」と、実に10倍になりました。
高騰する年俸を支払う球団としては、新たな収入源を模索してその原資を確保しなければなりません。
1試合だけで入場料収入とテレビの放送権料など、併せて何億円もの売り上げがあがるプロ野球の興行。球団としては、1試合でも多く主催ゲームを開催したいのは当然のことです。
理由の一つは、レギュラーシーズンの試合数増があります。長らく1シーズン130試合制でしたが、年俸の高騰が顕著になってきた1997年には135試合に、さらに2001年には140試合、交流戦が始まった2005年にはセ・リーグ146試合、プレーオフを行うパ・リーグは136試合、両リーグでクライマックスシリーズが始まった2007年には両リーグとも144試合となりました。
その後、「選手の負担が大きい」という選手会側からの長年にわたる問題提起を受け、2015年に1試合減らした143試合制となって今に至っています。
球団からすると、このレギュラーシーズンとは別に稼ぐ仕組みがクライマックスシリーズなのです。前述の通り、クライマックスシリーズでの売り上げは、主催チームの懐へ入ります。シーズンで優勝か2位のチームのみが手にできる、言わば「臨時収入」の機会です。
3勝は変わらないが…
ある球団の幹部と話をしている時「本音を言えば、もつれて試合数が増え、なおかつ日本シリーズに駒を進められるのが営業的には一番だ」と言われたことがあります。
今年のファイナルステージのルールが「シーズン優勝チームとの対戦相手がシーズン勝率5割を切っているか、ゲーム差10以上の場合は2勝のアドバンテージ」と変更されながら、このルール適用の場合は7試合制で、「5勝先取」とされたのも、まさに「臨時収入を得るチャンスを逃さない」ことに他なりません。新ルールに当てはまっても、そうではなくても、ファイナルシリーズを戦うシリーズ優勝チームが日本シリーズ進出のためには3勝することに違いはないからです。
とはいえ、クライマックスシリーズはプロ野球ファンにとっては消化試合が減るという大きなメリットがありますし、今年からの新ルールに引っかかるかどうかで最後までやきもきしながら応援し、チームも「何とか新ルール適用にならないよう」必死に5割を死守しようとする姿がありました。
多くのファンは、興行面での球団の事情など関係なく、贔屓のチームを応援していることは重々承知していますが、今回は敢えて「野球を面白くするため」という大義名分に隠された思惑について触れてみました。
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