5度の日本一「工藤公康」新監督で中日は復活できるか? 衝撃人事もチーム再建は“難航”と囁かれる理由…「ドラフト会議は新監督不在」か
最新鋭打撃マシンも
今年7月には最新鋭のバーチャル打撃マシンとされる「トラジェクトアーク」が購入された。投手の投球モーションが映し出されるだけではなく、データを入力すれば、実際に対戦した相手チームの投手のボールの回転数、変化球の軌道まで再現でき、実戦に近い打撃練習も可能だ。
メジャーリーグではすでに浸透しており、NPBでは阪神、ソフトバンク、巨人など一部の球団も導入しているが、「阪神は一、二軍に1台ずつあるが、3年計2億円のリース」(在阪記者)だという。中日は購入したというのだから、これも改革への意気込みだろう。
「朝田球団本部長が陣頭指揮を執りました。一昨年、球団が栄養士を採用し、バイキング形式の食事から好きなものだけを選ばずに、『この食材は必ず摂ること』などの指導がされました。昨季後半、試験的にファームで打撃の動作解析などが行われ、今季から球団全体で動き始めました。一昨年ようやく軌道に乗り始めたと聞いています」(前出・同)
集められたデータアナリスト、バイオメカニストは華々しい経歴の持ち主ばかりだ。データアナリストは社会人野球・トヨタ自動車とエイジェックからヘッドハンティングした。一人は慶応大学の大学院でも学んでおり、ライバル・巨人のアナリストも経験している。スタンフォード大学、同大学院を卒業した超エリートが「データ戦略グループ」の中核を担っており、埼玉西武ライオンズから引き抜いた敏腕もいる。バイオメカニストのなかには国立科学スポーツセンターで五輪代表選手を支えてきた者もいた。
新監督に求められるのは、このチーム改革の流れを理解し、加速させることである。米国の大学やスポーツ施設に毎年のように出かけていた工藤氏は、投球フォームの動作解析にも造詣が深い。前任のソフトバンク監督時代、トラッキングデータを分析するアナリストを活用し、計測器やトレーニングマシンなどを自ら操作して、その確実性を確かめていた。
かつての中日は選手の故障や大敗があっても、カリスマ的な指揮官が一喝してお終いになることもあった。目指すのは原因の追究と再発の防止。そのためのデータ解析と可視化が進められていた。
しかし、チーム改革はまだ始まったばかりである。他球団のファーム関係者によれば、中日二軍は「DeNA、巨人、埼玉西武、ハヤテ静岡」と同じ中地区だが、DeNAとの遠征試合の際は千葉県まで足を運んでいたそうだ。ファーム関係者たちの話を総合すると、投手の動作解析に必要なデータ測定マシンが千葉県内の民間施設にしかなく、シーズン中、何回かに分けてようやく二軍投手の何人かのデータを取り終えたところだという。
「二軍の本拠地であるナゴヤ球場のブルペンにユンボ機が入って、プレート付近を掘っていました。データ測定のマシンを埋め込む作業が進められています」(前出・同)
トラジェクトアークに加え、投手のデータ解析マシンも導入されるとなれば、それなりの出資もあったはずだ。今季は最下位に終わったが、投じた分を取り戻すのはまだ先になるかもしれない。
高校生を重点的に指名?
「中日の試合には『ウッカリ』が多い。得点好機に牽制球でアウトになったり、適時打を打った打者走者が二塁に行かずに一塁ベースで止まったり……。データ解析も大事ですが、選手個々に緊張感を持たせるべき」(前出・ファーム関係者)
とはいえ、今季の総失策数は60でリーグ最少だ。敗因は故障者の続出で、8月に板山祐太郎(32)が首の不調で登録を抹消され、今季の怪我人は20人となった。支配下登録選手70人のうち20人が怪我をしたとなれば、栄養士による食生活の管理だけではなく、トレーニング内容も大幅に見直さなければならない。「監督不在」もあり得る今秋のドラフト会議だが、25歳以下の野手が少ないことから高校生に重点を置いた指名も予想されている。
井上監督が残したものは、期待の若手をレギュラークラスまで引き上げたことだ。将来性に重点を置いたドラフトが行われるのであれば、データ解析による育成ビジョンの確立を急がなければ、チームの未来も危ぶまれる。
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