【横浜市長選】治安悪化リスク以上に街のイメージを重視……「IR誘致」の情勢調査から読み解くハマっ子たちの“頭の中”

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 パワハラ問題による山中竹春前市長の辞職を機に、18日投開票が行われる横浜市長選。自民党などが支援する弁護士の原澤敦美氏や元衆議院議員の中谷一馬氏、再出馬を期す山中氏をはじめ、名乗りを上げた候補者は7人だ。混戦が予想される横浜市長選を見通すために必要なものとは何か、米重克洋氏の分析を聞こう。

〈2026年10月6日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました〉

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「わが日の本は島国よ 朝日かがよう海に 連りそばだつ島々なれば あらゆる国より舟こそ通え されば港の数多かれど この横浜にまさるあらめや」

 横浜市歌の一節である。我が国に港は数あれど、この横浜にまさる場所はない、という意味だ。森鴎外が作詞したこの歌は、市立小・中学校で歌い継がれており、歌えない横浜市民はいないと言われるほど広く親しまれている。筆者は中学・高校時代、東京から横浜に通学していたが、そんな「外様」の人間でさえ、この歌に接する場面は度々あった。世界に開かれた「港町ヨコハマ」への誇り、いわばシビックプライドを象徴する歌である。

 横浜市長選を読み解く上でも、横浜市民のシビックプライドは見逃せない。かつて市長選の最重要争点だったIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致を巡る論争は、その典型だった。筆者の経営するJX通信社と神奈川新聞社が横浜市民を対象に2019年9月に行った調査では、IR誘致に反対するとした人が約64%に上った。

 ポイントはその理由である。最も多かったのは、治安の悪化やギャンブル依存症への懸念などではなく「カジノが横浜のイメージにそぐわないから」。具体的なリスク以上に、横浜という街のイメージへの負の影響を重視する意見が最も多かったわけだ。IR誘致は、既に認可が下りて事業者も決まった大阪をはじめ、地元住民の反対に直面しやすいが、街のイメージへの影響が反対理由になっていることは珍しい。

 そうした市民の懸念をよそに、林文子市長(当時)は任期終盤、IR誘致に邁進したことで、後に強烈なNOを突きつけられることとなる。2021年、林氏は4選を目指して市長選に立候補したが、得票は約19万6926票と次点にも大差をつけられ、惨敗した。その時の選挙で「IR誘致ストップ」を掲げて当選したのが、山中竹春前市長である。得票は林氏の約2.6倍にあたる50万6392票に上った。横浜市のIR誘致はこうして頓挫した。

対立候補をIR推進派に擬する

 ところが、今度はその山中氏のパワーハラスメント問題によって、市政そのものへの信頼が問われることになった。市の幹部職員に対する言動が第三者調査でハラスメントだと認定されると、山中市政を支えてきた自民、公明、立憲民主の市議会各会派は早々に離反し、不信任決議をちらつかせて辞職を求めた。山中氏は辞職を余儀なくされた。こうして、昨年に続き、1年ぶりの市長選挙が10月4日告示、18日投開票の日程で行われることとなった。

 奇しくも、時を同じくして全国的な注目を集めていたのは福岡県議会の不祥事だった。同じ地方政治の問題とはいえ、高額な海外出張や役職を金で売り買いするかのような政治資金の使い道、それを釈明する当事者の態度や言動がありとあらゆる形で「炎上」し、話題に事欠かない。

 こうした福岡の惨状は、横浜市政の混乱をカモフラージュする効果さえあった。実際、テレビ報道での言及数を見ても、山中氏のパワーハラスメント問題には、福岡県議会の不祥事ほどの注目は集まっていない。しかし、そもそも横浜市政に他地域からの注目が集まることは稀な中、久しぶりの全国的な話題が「市長のパワーハラスメント」とあっては、市民の誇りを傷つけるに十分な出来事だったろう。

 市長選に再出馬を表明した山中氏は、9月29日の出馬表明会見で〈私はハラスメント加害者であり、なぜこの問題が起こったのか理解しているから行える対策がある〉と述べた。SNSの情報空間では、この開き直りのような発言を問題視する声が広がった。一方、同じ会見ではIRについて〈再誘致の動きがあると感じている〉と述べ、阻止する姿勢を示したことも注目された。初当選した2021年の市長選を再現し、対立候補をIR推進派に擬する意図が窺える。

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「新潮QUE」にて公開中の関連記事【IR誘致は争点になり得るのか――「横浜市長選」を読み解くカギに「シビックプライド」】では、他候補のIR誘致に対するスタンスやその争点化の是非、7人もの候補者が出馬した理由などについてさらに分析している。

デイリー新潮編集部

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