推しを守るはずが、推しの仕事を奪うことに…有吉・Snow Man深澤“騒動”に見る「暴走するアイドルファンの心理」

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身近な人間に近い感覚

 ただ、その意識が強くなると、「推しのために何をすべきか」を本人よりもよくわかっている、という勘違いが生まれることがある。

 特にアイドルは、俳優やアーティストよりも「守るべき存在」として見られやすい。ファンは長い時間をかけて成長や苦労を見守り、ライブや映像、SNSなどを通して日常的に接するため、単なる好きな芸能人ではなく、身近な人間に近い感覚を抱く。

 その結果、たとえバラエティの中の演出であっても、本人が悪く言われるようなことがあれば、自分の家族や友人が侮辱されたように感じて、過剰な反応をしてしまう。

 厄介なことに、SNSでは怒りを表明するハードルが極端に低い。以前ならテレビを見て腹を立てても家族や友人に愚痴を言って終わっていたのかもしれないが、現在はほんの数十秒でスタッフや出演者本人にまで直接言葉を届けることができる。そして同じ感情を持つ人から「いいね」が集まれば、自分の怒りが正当化されたように感じられて、発言は徐々に過激化していく。

 有吉の「2度と出ないでくれと本人に伝えます」という返答が大きな反響を呼んだのは、このようなファン心理の問題点を一言で可視化してしまったからだろう。「もう出ないでほしい」という要求を文字通り受け取れば、その結果として失われる可能性があるのは深澤自身の出演機会である。推しを守るための抗議が推しの活動の幅を狭めてしまうという矛盾がそこで露呈した。

 もちろん、バラエティ番組での発言を不快に感じること自体は視聴者の自由であるし、笑いのための毒舌が常に正しいわけでもない。しかし、自分が不快だったからといって、「本人も傷ついているに違いない」と決めつけて、「こんな番組には出るべきではない」とまで考えてしまうのは行き過ぎである。

 ファンが本人の感情を勝手に代弁し始めた瞬間、応援は本人のためではなく、自分の頭の中の理想像を守る行為へと変質している。

 本人の意思をたしかめずに本人の思いを勝手に代弁して他者を批判する行為には何の正当性もない。本当にアイドルを応援したいのであれば、本人の活動の妨げになるようなことを安易にするべきではないだろう。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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