日本は「のぞき放題」だ! 「同盟国の軍事AIなら導入するのが当然」が無邪気すぎる理由

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 高市政権下、小泉防衛相はアメリカ企業、パランティアの軍事AI導入に前のめりになっている。そのリスクについてはすでにお伝えした通りである。(関連記事:この防衛政策は愛国どころか売国ではないのか 高市政権が進める「軍事AI導入」の知られざる恐ろしさ)

 ジャーナリストの烏賀陽弘道氏が同記事で指摘したリスクの最大のものは、安易な導入は国家機密がアメリカに筒抜けになるというものだった。データを預けるサーバーもアメリカ企業のものであり、しかもアメリカは国内法によってそれらデータを見ることが可能なつくりになっている。このまま進めば、日本の情報はすべてアメリカ側に握られることになるというのだ。

 これに対して、次のような反論コメントも寄せられている。

「日本のAIはアメリカよりもはるかに遅れている以上仕方がない」
「同盟国のアメリカと緊密になるのだからいいではないか」
「何らかの防御策は取るはずだ」

 もちろん、AI導入は必然だろうし、同盟国アメリカと緊密な関係を維持するのは悪いことではないだろう。しかし問題は「防御策」である。

 すでにアメリカ製のAIを導入している西側諸国と比べて、日本の防御態勢は不完全だ、と烏賀陽氏は指摘する。以下、烏賀陽氏の記事「無防備に過ぎる『パランティアAI導入』は立ち止まるべきだ」をもとに、日本の脆弱すぎる態勢について見てみよう(以下、引用は同記事より)。

日本のデータは「のぞき放題」

 今回の軍事AI導入以前の問題として、すでに日本の情報のかなりはアメリカに筒抜けになっている。菅政権下において、日本政府はデジタル庁発足以降、中央省庁から全国1741の地方自治体に至るまでの全基幹システムをクラウドへ移行させる国策を断行した。そのデータを預けたクラウドサーバーの大半がアメリカビッグテック(アマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクル)。これにより、日本国民のプライバシーデータ、企業の特許情報、各省庁の内部文書等々が「いつでもアメリカ政府がのぞき放題」になっている。

「あくまでも最悪を想定した『暗黒のシナリオ』も警告の意味で記しておこう。

 日本の捜査・公安機関が、日本国民のプライバシー情報(前述の病歴、納税、年金、移動履歴など)を入手しようとすると、個人情報保護法や国家・地方公務員法に抵触する。ドラマなどでは簡単に入手しているが、実は意外と入手のハードルは高い。

 しかし、アメリカのFBIなどを経由して照会すれば、違法に問われず、国民のプライバシー情報を入手することは可能だ。日米間には、捜査情報を共有する条約・協定が存在するから、法的な枠組みはできている。『日米刑事共助条約(日米MLAT / 2006年発効)』『日米重大犯罪防止対処協定(PCSC協定 / 2019年発効)』がそれにあたる」

 なぜこのような事態になったのか。

「ガバメント・クラウド導入の安全性評価を決定づけた政府の中核検討会は、経済産業省・総務省が2018年8月〜2019年12月に計9回開催した『クラウドサービスの安全性評価に関する検討会』だ。

 この9回すべての会議概要を見たのだが、上に述べたようなリスクを想定したうえで、『アメリカのCLOUD法・FISA 702条の適用を受けないようにする』『サーバーの外国親会社の支配を排除する』といった制度や条項、法律を作るべきだという話がまったく出てこない。防御策がないまま安易に導入に走ったのは明らかだ」

ドイツは対策を講じている

 そして今回の軍事AIでも政府は同じ愚を犯そうとしているという。「同盟国だから当然」というのは短絡的なようだ。NATO加盟国であるフランスやドイツなどEUの国々は、情報が筒抜けになるリスクを踏まえたうえで、法整備などを行っている。たとえばアメリカが国内法を根拠に勝手にデータを見るような行為を禁止しているのだ。

「ドイツやフランスは、サイバー空間が国家主権の防衛戦主戦場であることを早期に見抜いていた。アメリカの官民一体になったデジタル帝国主義の最前線であることがわかっていた。

 たとえアメリカが軍事上の同盟国であっても、国家主権を簡単には譲り渡さない。過度な従属を排し、自国の防衛産業・法制度を総動員して『最先端技術の利便性』と『他国法域からの完全な独立』を両立させた。これが成熟した主権国家としての自律性ではないのだろうか。

 特に、同じ第二次世界大戦の敗戦国なのに、ドイツのアメリカへの警戒感と日本の能天気ぶりの落差が際立つ。2013年、スノーデン事件で『アメリカNSAがメルケル首相(当時)の携帯電話を盗聴していた』『欧州航空機・エネルギー産業の機密が NSAに筒抜けだった』ことがバレて、ドイツのアメリカの諜報活動への不信感が高まっていたことが大いに影響していると私は考える。このドイツのアメリカへの警戒感は、EU内で共有されている」

 中国とアメリカが手を携えて大日本帝国を打倒した――米中首脳会談後、そんな言説がホワイトハウスからは発せられた。「同盟国だからすべてを委ねる」という考え方がいかに無邪気かを示しているかのようだ。

「永遠の同盟も永遠の敵もない。あるのは永遠の国益のみ」という格言を高市政権はどのように捉えているのだろうか。

 アメリカ製のAIを導入することと、アメリカに「データのぞき放題」サービスを提供することはイコールではない。烏賀陽氏は今からでも取りうる方策を検討すべきだと提言している。

 それら方策については、新潮QUEにて配信中の関連記事【無防備に過ぎる「パランティアAI導入」は立ち止まるべきだ】に詳しい。

デイリー新潮編集部

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