「話し上手」よりも「聞き上手」を目指す――AI時代に人が持つべき「最強の武器」とは

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「一人で深く考える」スタイルは、確かに一つの仕事のありかたかもしれない。しかし、「終日、公邸で過ごす」――。新聞に高市総理の「週末動静」を伝えるこの一行が並び続ける光景に、永田町では「コミュニケーション不全が政治を停滞させている」と囁かれている。

 生成AIが急速に「話し手」の領域を侵食しつつある今、人間に残された武器は「聞く力」と「自分だけの話」にある――。社会学者・古市憲寿氏はそう指摘する。AIが原稿を読み、知識を処理する時代だからこそ、問いを持ち、話を聞き、自分の経験を語れる人間の価値は上がると言うのだ。

※本稿の内容は『コミュ力不要の社交術』(古市憲寿著、新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「聞き上手」になる秘訣は自分の中に「問い」を持つこと

 コミュニケーションが苦手だという意識のある人は、まずは「話し上手」よりも「聞き上手」を目指したほうがいいと思います。

 ただ、「聞き上手」を目指すといっても、テクニックだけでは限界があります。では、どうしたらいいのか。

 まず「人間の話は何よりも面白い」と信じることです。

 ちなみに僕はこの定理を本気で信じています。文明が発達し、娯楽が無数にある現代社会でも、「おしゃべり」は娯楽として生き残り続けています。それくらい人との会話って楽しいことなんです。

 親友など気心の知れた人との会話と違い、全くの他人や、これから仲良くなりたい人との会話には気後れしてしまう人がいるかも知れません。

 でも実は、自分から遠い人の話のほうが情報量が多く、他では手に入らないことを知れる可能性が高いんです。

 相手が誰であろうと、定番の話題は相手自身に関して聞くこと。特殊な場合をのぞけば、自分語りが嫌いな人はあまりいません。

 どこの出身で、どんな勉強や仕事をしてきたのか。人類学者にでもなったつもりでライフヒストリーを聞いていけば、いくら時間があっても足りません。

 僕は他人のライフヒストリーを聞くのが好きです。

 有名無名に関係なく、どんな人生にもドラマがあります。映像化した時にハイライトになるようなシーンがあります。たとえば、教科書で「高度成長期」や「平成不況」の一言で片付けられてしまう時代には、人の数だけのドラマがあったはずなんです。

 どんな人でも、ちゃんと話を聞けば、絶対に自分の知らない面白いエピソードが一つや二つは出てきます。

 僕は、新しく会う人から「一つはエッセイのネタにできるような面白い話」を聞き出すようにしています。

 結局は、「問い」なのだと思います。自分の中に「問い」がいくつもある人は、誰と会っても、聞くべきことが無数にあるということです。

「話が面白い人」になれるのか

 聞き上手になるより、話し上手になるほうがハードルは高いです。

 だけどこれもテクニックでどうにかなります。

 人間は、興味のある分野の新情報を面白いと感じます。

 情報というのは差異からもたらされます。距離が遠ければ遠いほど、新しい情報は多くなります。

 たとえば極端な話ですが、平安時代の人に会えるなら、藤原道長のような有名人でなくてもいいですよね。歴史に名前が残らなかった市井の人であったとしても、もし現代にタイムスリップしてきたら、世界中からインタビューが殺到するはずです。

 もう少し現実的な話をしましょう。

 たとえばマスコミ業界では常識とされることも、食品業界の人にとっては新鮮だったりする。もちろん逆もしかりです。

 これを応用した「情報の転売屋」みたいな人がいます。たくさんのコミュニティに属しているから、ある会社で聞いたことを、次の会社でそのまま話す。それだけで「面白い人」の完成です。

 何も「すべらない話」を探す必要はありません。自分にとっては当たり前だけど、他人にとっては「へえ」と思う話は何か。その中でも、今から会う人が興味を持ちそうな話は何か。そんな風に、情報の「差異」を探していくんです。

何の話題なら1時間話せますか

 アナウンサーの桝太一さんはアサリの専門家としても有名です。おそらくアサリに関してなら何時間でも話すことができるのだと思います。

 桝さんは後輩のアナウンサーに、そのテーマで1時間の講演会ができるような専門性を持ったほうがいい、とアドバイスすることがあるそうです。

 アナウンサーは次々に若手が出てきます。今やAIでもニュースが流暢に読める時代です。「原稿を読むのが上手」なだけだと淘汰されてしまいます。

 そんな時に武器になるのは、自分の好きなことや専門的なことなのです。

 このアドバイスはアナウンサー以外にも有効だと思います。

 自分は何の話題なら1時間の講演会ができるだろう、と考えてみるんです。

 その中で経験談を混ぜる、というのは有効な方法だと思います。

 僕は国内外問わず、移動が多いのですが、旅先での出来事は話題にしやすいです。

 先日は台湾の金門島に行ってきました。中国本土と距離が近く、台湾有事の際に最前線になるのではとも言われる島です。

 みんな警戒しているのかと思ったら、中国が大好きな人ばかりでした。

 福建省からの観光客が多い上に、水もパイプラインで中国本土から送ってもらうような関係だそうです。

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 生成AIが急速に日常へ浸透し、「専門知識があれば多少感じが悪くても許される」という時代が終わりを迎えようとする今、人間に残された武器はとは、いったい何なのか――。

 新潮QUEで配信中の記事【コミュ力は不要だった――AI時代に仲間を増やす「シンプルすぎる仕組み」とは】では、社会学者・古市憲寿氏の新刊『コミュ力不要の社交術』(新潮新書)の内容をもとに、より詳しく解説しています。

デイリー新潮編集部

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