令和に「海原雄山」の怒声は響くか? 「美味しんぼ」「こち亀」の新作アニメに募るコンプラだけではない懸念…「実は、今の若手アニメーターはおじさんを描くのが苦手なんです」
若手はおじさんと動物が描けない?
合わせて問題になっているのが、アニメーターの慢性的な不足である。現在、空前のアニメブームが続いており、アニメの制作本数が多すぎる。アニメ会社はアニメーターの育成に取り組んでいるものの、十分に進んでいるとは言い難い。さらに、昨今の若手アニメーターは、“おじさん”や“動物”などを描くのが苦手な傾向が強いのだという。
「若手はイケメンキャラと美少女なら、正直誰でも上手く描ける。しかし、中年男性や老人を雰囲気あるように描ける人が少ない。『美味しんぼ』も『こち亀』も出てくるのはおじさんばかりですが、癖が強かったり、貫禄があったりしてとても魅力的です。こうした男性を今の若手がどこまで描けるのか、不安です」
そう話すのは、専門学校で講師を務めるベテランのアニメーターである。
「おじさんもそうですが、動物に苦手意識を持つアニメーターも多い。例えば、重要な場面で動物がたくさん出てくるアニメで、絵コンテの担当者に“作画が大変になるから、あまり動物を出さないでくれ”とお願いしたケースがあるそうですから。そのため、昭和の時代と比べ、アニメの内容が軽くなってしまう傾向にあるのでは」(前出のアニメーター、以下同)
昭和の時代は描ける人が多かった表現を、今の若手が苦手としているケースも多いようである。もちろんベテランで絵の上手いアニメーターはたくさんいる。だが、そういった優秀なアニメーターは、資金が潤沢でヒットが見込めるタイトルに拘束される傾向にあり、獲得が難しいようだ。また、若手特有の問題は他にもあるという。
「アニメの制作本数が多く、アニメーターが枯渇しているぶん、若手は仕事が選べるほどたくさんあるんです。そのせいか、誰もが知っている人気タイトルしかやろうとしない若手が多いように思う。彼らには80~90年代の作品は馴染みが薄いので、参加したがらないんですよ。そのため、有名なスタジオでも人材集めに苦労しているのが実情だと思います」
昭和の時代は大らかだった
コンプライアンスを順守することは大切だろう。特に昨今のアニメは海外に売り込むことも多いため、性的な表現や、昭和のおじさんに見られた暴力や暴言がマイルドになるのは、必然なのかもしれない。しかし、コンプライアンスを意識しすぎると作品の根幹に影響を与えてしまいかねないと、前出のアニメーターは危惧する。
「特に、セリフを変更する際は相当慎重に行わないと、下手したらキャラクターの性格が変わってしまいかねない。殴る、蹴るなどの特徴的な表現をやんわりとしたものにしても、当然、キャラのイメージが変わります。制約がある中でもうまく表現するのがプロの技と言えばそうなのですが、それができるだけの人材が今どれだけいるでしょうか……」
どんなアニメ関係者であっても、少しでも良いものを制作しようと努力している。これは間違いないだろう。しかし、令和という時代の制約、そして制作に関わる人々の技術的な問題もあって、「かつてより自由に作れなくなった」と嘆くアニメ関係者は少なくない。リメイクがオリジナルより評価されにくいのは、こうした複合的な要因があると思われる。
令和版の『美味しんぼ』と『こち亀』はどうなるだろうか。国民的名作であるだけに、関係者のプレッシャーも大きいと思うが、往年のファンだけでなく、若いファンものめり込むほどの作品に仕上げてほしいと願っている。
[2/2ページ]

