右睾丸部に打球直撃、それでも続投…167センチで188勝 石川雅規「25年間」の凄すぎる名場面

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「行ってきます!」

 長い連敗のトンネルを脱出し、約10ヵ月ぶりの白星に感激したのが、2018年3月31日のDeNA戦だ。

 前年、石川は5月18日の巨人戦でシーズン4勝目を挙げたのを最後に勝てなくなり、球団ワーストタイの11連敗でシーズンを終えた。

 プロ16年目のベテランも「もう勝てないんじゃないか」と自信を喪失し、シーズン終盤には家を出るときも「気づいたらうつむいていた」という。

 だが、「家を出るときは元気良く行ったほうがいいよ」と夫人からアドバイスされて以来、元気な声で「行ってきます!」と言うよう心掛けた。

 翌18年の開幕2戦目、DeNA戦の試合前も「行ってきます!」と声を張り上げて家を出た。

 この日は右打者の内角を突き、シンカーを交えながら緩急をつけるベテランらしい投球がハマり、スタンドで見守る夫人と2人の息子の前で7回途中3失点の好投。5対3の勝利で自身の連敗を「11」で止め、「喉から手が出るほど欲しかった」白星を手にした。

 お立ち台で「一番のファンは家族。まだまだ頑張るぞって姿を見せたいと思っていた」と感謝の言葉を口にした38歳は、6月12日の西武戦で通算160勝目を記録した。

初志貫徹

 引退会見で「一番最後の188勝目の、あの1勝が(野球人生で)一番うれしかった」と語った試合は、2025年5月4日の阪神戦だ。

 同年、石川は4月9日の阪神戦で5回3失点と試合をつくり、NPB新記録となる新人から24年連続勝利の偉業を達成した。

 この日も21歳年下の新人左腕と互角に投げ合い、「伊原(陵人)投手もすごくいい投球をしていたので、僕も引っ張られた」と振り返る。6回まで森下翔太のソロによる1点に抑えた。

 そして、1対1の7回、自らの代打で登場した増田珠の2点タイムリー三塁打などで勝ち越し、5対2の勝利。我慢の投球が報われ、チームの連敗を「3」でストップした石川は「いろいろなことは考え過ぎず、自分の投球を心掛け、連敗が止まって良かった」と通算188勝目に感無量だった。

 筆者は冒頭で紹介した高校時代の思い出を本人から取材した際に、読者プレゼント用のサインボールに「好きな言葉を書き添えてください」とお願いした。その言葉「初志貫徹」は、常に挑戦者精神を持ちつづけ、ひたすら目標に向かって突き進んでいった石川の野球人生をそのまま物語っている。

 25年間、その言葉どおりに歩んできた石川。最後のマウンドでどんな姿を見せるのか。その一球一球を目に焼きつけたい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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