9回に同点弾、現役最終戦で2本塁打、引退登板で完封…「最後の試合」で奇跡を起こした男たち

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有終の美でうれしい

 近年の引退試合では、投手は先発して打者1人だけの対戦がお約束だが、過去には現役最後の登板で完投勝利を挙げた投手もいる。

 ロッテのエース・村田兆治は、1990年10月13日の西武戦で先発として引退登板のマウンドに上がった。

 先発完投を信念としてきた“昭和生まれの明治男”は「まだ現役として勝てる自信がある。しかし、引き際というものもある。リリーフとして起用され、それに失敗した。その結果に対する責任をはっきりさせたかった」と、あえて余力を残して現役を終える道を選んだ。

 当初9月30日に予定されていた登板は雨で流れ、この日もあいにくの雨模様だった。

 だが、40歳の背番号29は「これが最後と思うと、足はガクガク震えたよ」と緊張しながらも、ぬかるんで足場の悪いマウンドをものともせず、トレードマークの“マサカリ投法”で最速145キロをマーク。西武の主砲・デストラーデを三振に切って取るなど、5回を83球、4安打無失点5奪三振に抑えた。

 試合は5回降雨コールドゲームとなり、4対0の完封勝利。これがシーズン10勝目で、通算10度目の二桁勝利、そして215勝目となった。

「今日は23年目の完全燃焼。有終の美でうれしい」

 笑顔で最後の花道を飾った。

 引退セレモニーでは「私の人生の喜びも悲しみも、すべてこのマウンドの上にありました。これまで投げつづけてこられたのも皆様のお蔭です。心からお礼申し上げます」と挨拶し、最後はナインたちの胴上げで4度宙を舞った。

 一方、9回を投げ切り、白星で有終の美を飾ったのが阪急・谷村智啓だ。

 1985年10月14日の近鉄戦で先発し、デービスの本塁打による1失点だけに抑え、2対1で5年ぶりの完投勝利。これが通算72勝目となった。

「昔のいいときの投球を思い出したよ」

 最後まで投げ抜いた右腕は、まんざらでもなさそうだった。

 西武・栗山も8月30日の引退試合、楽天戦の現役最終打席となった4打席目に通算2152本目の安打を記録した。25年間の現役生活、その最後を自らのバットで飾った。

 長い現役生活で積み重ねた数字はもちろん大切だが、最後の最後に放った一打、投じた一球が、通算成績以上に強くファンの記憶に刻まれることもある。今年これから最後の晴れ舞台を迎える名選手たちには、果たしてどんなドラマが待っているだろうか。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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