その異動の性格は「左遷」か「お仕置き」か “財務省のエース”一松旬氏が「あまりぱっとしない」東京税関長に転じた真意とは
「10年に1人の大物財務官僚」と称される主計局次長の一松旬氏は今夏、東京税関長へと異動となった。この人事をめぐっては「左遷」といった見方が広がっているが、関係者への取材を進めると、別の理由も浮かび上がってきた。その異動の真意を探る。
(2026年9月2日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)
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一松氏の「東京税関長」異動をどう読むか
食料品の消費税減税をめぐる調整の影響で、発令が昨年より1カ月以上遅れた今夏の財務省人事。新たな事務次官に宇波弘貴氏、国税庁長官に青木孝徳氏、主計局長に坂本基氏が就くなど、大方の予想通りの人事での着地となった。
しかし、その中で異例ともいえる異動となった人物がいる。主計局次長から東京税関長に転じた一松旬氏(ひとつまつ・じゅん、平成7年入省)だ。「10年に1人の逸材」とも評され、将来の事務次官候補として呼び声の高かった人物である。
一松氏とは一体どんな人物なのか。元財務官僚に話を聞くと、
「一松氏は開成高校、東京大学法学部を卒業後、入省しました。入省後は、理財局、主税局、奈良県の副知事、内閣総理大臣秘書官、主計局次長を歩んできたピカピカのエリート。間違いなく将来の次官候補の一人です。人物として言えば、まず『国士』という言葉が一番似合います。思い込んだら一直線に進むタイプで、官邸に対しても意見を曲げない。そして頭が非常に緻密で、アバウトなところが一つもありません。東大でもトップクラスの成績だったと言われています」
そんな優秀な一松氏が、なぜ本省の中枢から東京税関長へ異動することになったのか。財務省担当記者は、
「今の積極財政を志向する官邸と、財政健全化を重視する財務省との間には、財政政策をめぐって距離があります。消費減税について議論する社会保障国民会議の実務者会議の中で、一松氏は消費税の減税には断固として反対の立場をとっていた。会議には全世代型社会保障改革担当大臣の城内実氏らも参加していましたが、城内大臣と高市早苗首相は仲が良く、一松氏のそうした姿勢が高市首相の耳にも入り、官邸から目をつけられていたことが異動の要因でしょう」
そもそも東京税関長の仕事はどのようなものか、元東京税関職員が説明する。
「東京税関の仕事は、成田・羽田空港や東京港などで、輸出入されるモノをチェックし、関税などを徴収するとともに、密輸や知的財産権を侵害する偽ブランド品などを水際で取り締まることです。それを統括するのが東京税関長。物流の最前線を見ることができ、税関でなければできない仕事も多く、非常にやりがいがあります。テレビでも税関の仕事はよく取り上げられますし、公務員の仕事の中では華やかな仕事の一つだと言えます」
一松氏の異動は「左遷」とも言われているが、
「異動の性格について言えば、『左遷』というより、『お仕置き』という言葉が一番近いと省内で言われています。今では東京税関長はあまりぱっとしませんが、以前は津田広喜氏など事務次官になるような人が就くこともありました。それに、国家公務員の基本給を定める指定職俸給表を見ると、主計局次長は2号俸、東京税関長は3号俸で、号俸上はむしろ一段上がっているんです。本当に左遷する意図があれば、地方の財務局長や関連団体の役員などにさせるでしょう」(前出の元財務官僚)
「王道」を歩んできた宇波新次官
一松氏が今後、本省に復帰すれば歩むことになるであろうルートを最短で通ってきたのが、新川浩嗣事務次官の後任となった宇波氏だ。
「宇波氏は都立西高校、東京大学経済学部卒業後、平成元年に財務省に入省しました。入省後は、主税局や主計局で経験を積み、岸田政権で内閣総理大臣秘書官を務め、財務省に戻って大臣官房長、主計局長、次官と最短のルートを歴任した。今の財務省では将来の幹部候補には税と予算の両方を経験させる傾向がありますが、まさにそうした王道をずっと歩んできた人物です」(前出の財務省担当記者)
同期にはライバルはいなかったのか。
「彼の同期には、他に有力な次官候補として、小野平八郎氏と青木孝徳氏がいました。熊本高、東大法卒の小野氏は総括審議官だった2022年、泥酔したうえで電車内でトラブルを起こして大臣官房長の候補から外れました。阿久比高、東大経済卒の青木氏も宇波氏と次官レースを争っていましたが、青木氏は官房長から主税局長に回り、最終的に主計局長を務めた宇波氏が次官に就くという流れになりました。宇波氏が首相秘書官で評価され、官房長として財務省に戻ったあたりから、省内では『次官確定』という雰囲気になっていました」(前出の元財務官僚)
王道を歩み、事務次官まで上り詰めた宇波氏。そのルートに、一松氏はいつ戻ることができるだろうか。
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「新潮QUE」にて公開中の関連記事【財務省・一松旬氏の東京税関長異動は「左遷」というより「お仕置き」 宇波新次官の歩んだ王道に戻れるのか】では、一松氏の次官レースへの復活ルートなどについてより詳しく報じている。


