【追悼・張本勲氏】ひとつの「喝!」が世論を大きく動かした…ネットニュース編集者が振り返る唯一無二の「御意見番」語録

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高齢者と子どもには「あっぱれ」

 大谷翔平の「二刀流」についても「どちらかにしなさい」と日本ハム入団前から言い続けていたが、大谷がメジャーで見事大成功すると二刀流を認め、「あっぱれ!」を出した。そうしたフェアな人物なのである。

 さて、溢れ出る優しさは、特に高齢者と子どもたちに向いた。この2つの属性の人々が登場するスポーツが紹介されると相好を崩して「元気でいいねぇ」などと言いながら、大抵の場合「あっぱれ!」を出したのだ。

 また、先輩を立てる面もよく表れた。先輩である大沢氏が張本氏に「まぁまぁ、そう言うなって」などとたしなめると素直に受け入れていた。先輩の金田正一氏と一緒に出ると「カネやんオンステージ」のごとき状況で、張本氏の口数は少なかったし、金田氏がいかに剛球を投げていたか、といった説明をして先輩を立てたのだ。それにしても金田氏は面白かった。

 週刊ポストのインタビューでは「ワシの投げた球は180km」と言ったかと思えば、翌年以降のインタビューでは「ワシの球は200km」と言う。「週刊御意見番」では、川上哲治氏が亡くなった時、ひっそりと川上氏を偲ぶのではなく、「ワシの豪球はいかにすごかったか」「川上氏をいかに抑えたか」などと話し、関口氏と張本氏から苦笑されていた。

 要するに、このコーナーは昭和の重鎮が過去を懐かしみながら、武勇伝を語ったり、現代のスポーツに小言を言う様を楽しむコーナーだったのだ。ネットで批判を書き込む若い視聴者はまじめに捉えすぎていたのである。それでは本当の楽しみ方ができていなかったと思う。

掃除が上手そうじゃないですか

 ただ、コンプラ時代に合わない面があったのは否めない。それは、東京五輪の際、女子ボクシングフェザー級で金メダルを獲得した入江聖奈に対し張本氏が「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技好きな人がいるんだ」と発言したことに表れる。あとはカーリング女子を報じた際、「この人たちはいい奥さんになるねぇ」と発言。司会の関口氏は鳩が豆鉄砲をくらったような表情をして意図を聞いたが、張本氏は「掃除が上手そうじゃないですか」と言った。カーリングでは、ブラシで表面をこすりながらストーンを狙いの場所に誘導していくが、この様子を自宅を箒で掃除しているように感じたから出た発言である。

 2010年代後半、日本ではコンプラ意識が強くなりセクハラ・パワハラは絶対に許されない時代に突入すると、かつて乱発していた「喝!」は減っていった。何しろ「喝!」を一つ出すたびにネットニュースとなり、張本氏は批判されたのである。以前よりも元気がなくなったように見えた中の2021年12月、同氏の「卒業」に関して私は原稿で「あっぱれ!」を入れた。

 そして今回の訃報だ。今年は私が敬愛してやまない漫画家の東海林さだお氏に続き、張本氏まで亡くなった。「いつか一緒に仕事ができるのではないか」と分不相応なことを思い、この仕事を続けてきたがその心の支えがなくなってしまった。と個人的なことはどうでもいい。とにかく張本勲さん、被曝や大やけどを経て偉大なる野球選手になり、その後は強烈な存在感を放つ野球評論家として我々を楽しませてくれ、鼓舞してくれました。本当にありがとうございました。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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