「これは普通の行為ではない」という感覚…板野友美「ホテル脱衣所撮影」が大炎上したワケ

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スマホによる撮影が日常化

 もちろん、実際の撮影時に周囲にほかの利用者がいたのか、ホテル側がどのような条件で許可したのかなど、確認できない事情もある。その点を無視して、板野が他人を無断撮影したかのように扱うのは行き過ぎである。

 しかし、今回批判されたのは、他人が実際に映ったかどうかだけではない。脱衣所でカメラを回した動画そのものを、不特定多数が見る場所で公開したことへの抵抗感が大きかったのである。

 視聴者からすれば、それが特別に管理された撮影だったとしても、映像だけを見れば通常のホテル利用中に脱衣所でVlogを撮影しているように見える。そこで、「これは普通の行為ではない」という感覚との衝突が生じた。

 さらに今回の騒動には、現在のSNS時代特有の事情もある。スマホによる撮影が日常化したことで、公共の空間と個人的な撮影空間との境界は曖昧になった。飲食店でも観光地でも、目の前の風景をすぐに撮影してSNSに載せることが当たり前になっている。

 その一方で、温泉、サウナ、ジムの更衣室などについては、「ここだけは撮影されない場所であってほしい」という社会的な感覚がむしろ強くなっている。脱衣所などでは、スマホを利用したり取り出したりすること自体が禁止されている場合が多い。今回の動画は、そんな人々の心理を逆撫でするようなものだったのではないか。

 板野のようなインフルエンサー型の芸能人は、私生活を見せれば見せるほど価値が生まれる。単にホテルの部屋だけを紹介するよりも、大浴場へ行き、風呂上がりにスキンケアをし、子供の髪を乾かすところまで映すことが求められる。

 テレビ番組ならば、スタッフが「ここから先は撮らない」という線引きをするところでも、Vlogでは日常生活へカメラを深く入り込ませること自体がコンテンツになる。その結果、「生活を見せること」と「他人が共有している空間を撮影すること」の境界を見失いやすくなる。

 今回の炎上が示したのは、動画撮影者は許可さえ取ればどこでも撮影して良いというわけではなく、撮影されたくない人の気持ちにも十分に配慮しなければならないということだ。

 発信力の大きな芸能人であれば、なおさらその判断には慎重さが求められる。それは、板野に限らず、インフルエンサー的な活動をする誰もが心に留めておかなければいけないことなのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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