アップデートに惑わされない――勝間和代が「最新AIを追わない」と決めた理由
「ChatGPTがいい」「今度はGeminiが追い抜いた」――生成AIの話題には、性能を巡る論争がつきものだ。ガジェット好きとして知られ、数十のデジタル機器を自ら試し、AIを仕事から日常までフル活用する経済評論家・勝間和代氏が愛用するのはGoogleのGemini。しかし、「なぜGeminiなのか」と尋ねると、返ってきたのは意外なほど素っ気ない答えだった。(取材・大塚一樹)
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勝間氏がGeminiを選ぶ理由
「私は、生成AIは基本的に大同小異だと思っているんですよ。もちろん、モデルごとに多少の得意・不得意はあります。でも、こちらが驚くほどの決定的な差があるわけでもない」(勝間氏、以下同)
AIの最新モデルを追い続けることに、勝間氏は懐疑的だ。
「今はChatGPTがいい、次はClaudeがいい、と、みなさん一生懸命に比較しますよね。でも、その順位はアップデートのたびに入れ替わります。今日一番賢いAIが、半年後も一番とは限らない。そこを追いかけ続けても、あまり意味がないと思っています」
重要なのは、性能表の順位ではなく、自分の日常の中で「摩擦なく使えるか」だという。
「私の場合、GmailやGoogleドキュメントなど、普段使っているサービスと連携しやすく、同じ環境の中で一通り完結できる。その意味でGeminiが一番簡単なんです。Geminiが常に世界で一番賢いから使っているのではありません。私の生活にとって、一番摩擦が少ないから使っているんです」
AIを乗り換えるたびに失われるもの
生成AIを変えるということは、単にアプリを切り替えるだけではない、と勝間氏は指摘する。
「AIを乗り換えるのは、アプリを変えるだけのように見えますが、実際にはそれまで積み重ねたやり取りも失います。私がどんな文章を好むのか、どんな表記を使うのか、どういう形で出力してほしいのか。そういう細かなことを、また一から教えなければいけません」
勝間氏はメールマガジンや原稿の作成にもGeminiを活用している。書きたい内容を音声で一気に入力し、AIに整えさせるという。同じAIを使い続けることで、指示の蓄積とともに、自分もそのAIの扱い方に慣れていく。その双方向の積み上げこそが、実際の使い勝手を左右する。
「AIの性能は、モデル単体の賢さだけで決まるものではありません。自分のことをどれだけ知っているか、自分がどれだけ使い慣れているかとの掛け算です。だから、世間で一番賢いAIが、自分にとって一番使いやすいAIとは限りません」
最新が最良とは限らない
もっとも、勝間氏も新しい技術を試さないわけではない。複数の音声認識モデルを自ら比較し、ローカルでAIを動かす実験も行った。その結果は――。
「結局、ローカルよりもクラウドサービスの方がずっと速かった。そう分かった瞬間、『もうローカルで頑張らなくていいじゃない』という結論に至りました。でも、試してみなければわからない。だから自分でまずはやってみるんです」
実験の末に「前のものの方がいい」と気づいたら、あっさり戻る。その割り切りもまた、勝間流だ。
「最新のものが、必ずしも最良とは限りません。新しい技術を使うこと自体が目的になってしまうと、いつまでも環境づくりばかりして、肝心の仕事や生活が楽になりません」
「実用化されれば、誰もそれをAIと呼ばない」
勝間氏はGoogleのサービスの中で仕事と生活を完結させている。メールはGmail、文章はGoogleドキュメント、移動にはGoogleマップ。AIを使うために別の場所へデータを移す必要がない環境こそが、生産性を支える。
「一回一回は大した手間ではなくても、毎日のことになれば、かなりの時間と集中力を奪われます。AI単体の性能が少しくらい高いことより、普段使っているサービスと自然につながることの方が大切です」
そして勝間氏は、AIとの付き合い方について、こんな視点を示す。
「Googleマップだって、みんなAIとは言いませんが、AIなんですよ。目的地を入れれば、その時々の状況に応じてルートを考えてくれる。でも私たちは、それを使うたびに『今日はAIを使った』なんて意識しませんよね」
以前、AIの研究者と交わした会話が印象に残っているという。
「『実用化してしまうと、誰もそれをAIとは呼ばない』という話が一番面白かったんです」
生成AIも、やがて同じ道をたどる。新しいモデルが出るたびに話題になり、どれが一番賢いかを比べる時代は、いずれ終わる。
「最新情報を全部知っていることが、AIを使いこなすことではありません。自分の仕事や生活に合うものを一つ選び、対話やデータを蓄積して、道具として意識しなくなるまで使う。アップデートに左右されず、取り残されないためには、そのくらいの付き合い方でちょうどいいんですよ」
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新潮QUEで配信中の記事【アップデートや性能に左右されない――仕事から日常までフル活用 「勝間AI」の極意】では、AIを巡る勝間氏の試行錯誤の変遷や、プロンプトを作成する際に実践している具体的なルールなど、より詳しく伝えている。


