選手を背番号で呼び、専門用語も使わない それでも本田圭佑のサッカー解説が面白すぎるワケ

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「リアルな思考」の再現

 視聴者が本田から受け取っているのは、整理された分析結果ではない。一流選手が試合をどう見て、何に違和感を覚え、どの瞬間に危険を察知するのかという「リアルな思考」の再現なのだ。

 選手の名前を知らなくても、その選手が試合を支配していることはわかる。細かなデータを覚えていなくても、守備陣のポジションや動きを見れば攻略すべき場所は見えてくる。本田は自分自身の経験に基づいて、ピッチ上でいま何が起こっていて、どうすればいいのかを本能的に判断して、それを言葉にしている。そこにほかの解説者にはない生々しさがある。

 しかも、本田は難しい専門用語を使わないので、その言葉はサッカー初心者にもわかりやすい。ガクポの動きが良いことを説明するのに「11番、めっちゃウザい」と言う。オランダ代表の身長が高いことを説明するときに「オランダはとにかくデカい。トイレも便器が高い」とわかりやすい具体例を出す。

 誰にでもわかる言葉でサッカーの奥深さや面白さを表現してくれる。その上、得点シーンなどでは視聴者と一緒に感情をあらわにして興奮してみせる。サッカー中継の解説者としてこれほどふさわしい存在はいない。

 本田は優等生的に情報を整理して届けるタイプの解説者ではない。試合という出来事の中に自ら飛び込み、一流選手の目線で勝負の分岐点を見つけ出し、視聴者と一緒に驚き、怒り、叫ぶ。彼が解説席にいると、中継そのものが1つのドラマになる。

 彼がオランダ戦で改めて見せつけたのは、サッカーを見る目だけではなく、どんな場所に置かれても多くの人を魅了してしまう圧倒的なスター性なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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