「長女が後悔する気持ちはわかります」現行犯逮捕のプロ “元ハコヅメ女性警官”が巨人・阿部前監督の暴行事件を徹底解説
なぜ署員たちは“微妙な判断”を下したのか
「非常に微妙なところです。通常、暴行や傷害容疑での現行犯逮捕をする時は、血が流れていたり、衣服が破けていたりするなど、明確に犯行の証拠が残されているケースがほとんどです」
ならば、なぜ署員たちは“微妙な判断”を下しただろうか。
「『人身安全関連事案』だったからだと思われます。警察用語で、虐待、ストーカー被害、DVなどで、被害者の生命や身体の安全を早急に確保する必要がある事案を指します。『首を絞められた』という深刻な被害を考えれば、被疑者と被害者を同じ家に残して帰るわけにはいきません。しかも、家の中にいるのは酒を飲んでいる体躯が大きい阿部さんと女性3人。警察が帰った後で『なんで通報したんだ』などと暴れるようなことがあっては大変です。被疑者は罪を認め、被害者らの証言と一致していることも鑑み、逮捕に踏み切ったのだと思います」
逮捕要件は満たしていたと言えるのか。ここが警察批判のポイントになっている。
現行犯逮捕を定めているのは刑事訴訟法第212条。同条は2項あり、第1項は現行犯、第2項は準現行犯を規定している。準現行犯とは、犯行から一定時間が経過している場合でも、被疑者が凶器を所持していたり、被害者の服が破けていたりする証拠があるなどの4つの要件を満たしていれば、現行犯とみなせるとの規定だ。
現場だけの判断で逮捕することはほぼない
ネットなどで不当逮捕と主張している識者の多くは、警察が駆けつけた時は犯行時刻からかなり時間が経った後だから準現行犯が適用されたはずで、準現行犯ならば上記した逮捕要件を満たしていないとしている。しかし、石川さんは第1項の現行犯を適用したのではないかと考えている。
「第1項の条文には〈現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする〉としか書かれていません。大抵の現場において警察官が臨場した時にはすでに犯行は終わっているものです。現行犯と準現行犯の違いは『時間の経過』で、現場では『犯行直後』であれば現行犯とみなされるとして運用しています。先輩たちからは、現行犯で行けるのは30分程度、準現行犯は1時間程度と教えられてきました。それ以上時間が経過していたら現行犯逮捕はできず、令状が必要になります」
なお、現場だけの判断で逮捕することはほぼないと言う。
「現場にいる警官は被害状況を確認してから必ず署にいる警部補や宿直責任者に報告を入れ、判断を仰ぎます。今回は大きく報道されることが予想される事案であり、もっと上の幹部クラスが判断を下した可能性があります」
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