史上初「民家」が国宝に指定! はたして「重要文化財」の“民家”で暮らすとはどういうことか? 住民が明かす驚きの日常「囲炉裏でバーベキュー」「真夏でもクーラー不要」

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囲炉裏でバーベキューをやる

――とはいえ、それはお父さんの決断であり、鈴木さんは新しく家を建ててもよかったわけですよね。

鈴木:我が家は、家のまわりの環境、山林なども昔の面影を残していて価値があるという理由で、平成6年に“土地”そのものも重要文化財に指定されました。そのため、逆に管理棟を建てるのが難しくなってしまったのです。ただ、家も広いし、嫁さんが「私もここに住みます」と言ってくれたので、喧嘩しながら住んでいますよ。

 子供も3人いて、今でも家族6人で住んでいます。小学校のときなんかは息子の友達がいっぱい来て、「家の中が広くていいな!」と言っていました。何しろ天井がなく梁がむき出しなので余計に広く感じますし、雨が降っても家の中で走り回って遊べるなどのメリットはありますね。

――さらに、鈴木さんの家は囲炉裏に毎日、薪がくべられ、火が焚かれています。囲炉裏の煙は茅を長持ちさせる効果があるため、民家の保存のためには大切なことといわれています。

鈴木:今でも囲炉裏は普通に使っていますよ。年に2~3回、家族で囲炉裏を囲んでバーベキューをやったりします。また、我が家は民泊もやっていますが、宿泊した方には、囲炉裏を使って魚や肉を焼いてもらったりしています。コーヒーを飲んだり、スパゲッティを食べたり、コンビニで買ってきた食事を食べたりするのも自由です。

――江戸時代の民家のなかで、現代的な暮らしが送られていることに驚きます。しかし、秋田は豪雪地帯ですし、家の中が氷点下になることもありますよね。

鈴木:いや、寒さはもう、慣れっこですよ。寒ければ服を着ればいいだけですから、大したことはありません。そのぶん、夏は最高。風が家の中を通り抜けるので、クーラーは要らない。この快適さを味わうために日々生きているようなものです。

古い家のほうが新築より頑丈

――大変なことは。

鈴木:やっぱり維持管理の費用をどう捻出するか、ですね。維持費として国から年間数十万円の補助は出るのですが、冬囲いなどの環境整備などはこちらで行わなければいけません。今年、我が家では屋根の修理を行うのですが、自己負担する部分も大きいです。屋根の全面葺き替えなど、数千万円という規模の修理になると、国からお金が出るといってもかなりの負担になります。それは、国宝になっても同じだと思います。

 重要文化財の民家のなかでも一般公開している家は少なく、我が家は住みながら一般公開している全国的にも稀な例です。40年以上前から公開は続けていますが、家の中で昼寝しているところを覗かれたりとか、仏像が盗難に遭ったりしたこともありました。しかし、重要文化財に住むというのはそういうものだと思って、割り切っています。

――今回の箱木家、古井家の国宝指定で、民家への関心が高まることは間違いないと思います。その一方で、希少価値が高い民家が取り壊される例も相次いでいます。保存の機運が高まり、活用が進むためには何が必要だと考えますか。

鈴木:私は、住み続けることが一番の保存だと思っています。重要文化財の民家には、人が住んではいけないという考えが未だに根強くありますが、昔からずっと住んできたのだから、今でも住むのは当然だと思います。逆に住まないのはもったいないと思いますね。

 昔の家はすぐに壊れるのではないか、災害に弱いんじゃないかと考える人もいますが、そういった不安も払拭したい。私が思うに、古い家はこれまで数多くの災害を乗り越えてきているわけですから、実は丈夫なんですよ。

 新築で建てた家も、30年くらいで建て替えてしまう例が多いそうですが、あまりにもったいない。それだったら、100年経った家を買って住めばいい。私の家には、古い家に住みたいという人がよく来ますし、以前より関心が集まっているのがわかります。文化財や民家のイメージを変えていくことが、うまく利活用するために大切だと思います。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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