「減税」をめぐる高市首相vs財務省、舞台はついに「夏の人事」にまで
強権ぶりの際立つ高市早苗首相が次に目をつけるのは、夏の霞が関人事だ。やり玉に挙がる財務省では、“既定路線”とされていたはずの人事案に暗雲が垂れ込める――。(竹場四郎/ジャーナリスト)
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「国民会議」での総スカンを引き金に
この夏、霞が関の幹部人事を巡って激震が走る予感が漂い始めた。政権の引き締めに焦る高市早苗首相が、自身の威光を見せつけるために強権を振るうというものだ(高市首相の“人事をテコに睨みを利かせる手法”については、新潮QUEの記事【首相が目論む夏の“見せしめ人事”、やり玉に挙がる「最強官庁」と「次なるターゲット」】でも詳述している)。「生贄」候補には最強官庁・財務省まで挙がる。
「あなたたちの仕切りが悪い」。東京・永田町の首相官邸。今春、その最上階に陣取る「主」から怒気を含んだ声が飛んだ。
向かい合っていたのは財務省の宇波弘貴主計局長(平成元年旧大蔵省入省)。やり玉に挙がったのは、高市氏の肝入りでスタートした「社会保障国民会議」の運営だ。
高市自民党は圧勝した今年の衆院選で、「食料品消費税2年間ゼロ」の検討加速を公約した。これと「給付付き税額控除」を詰めるため、超党派で立ち上げたのが国民会議。高市氏は消費減税を「悲願」と称し、今秋の関連法成立、2027年3月までの実施というスケジュールを描く。
「これからは国民との約束を実現するのが大切よ」。個々の公約履行が高支持率維持のカギになるとみる高市氏は、たびたび周囲にこう語る。
だが、国民会議の議論は高市氏の思いと離れた方向に走り出した。関係団体のヒアリングで、スーパーやコンビニのレジを「税率0%」用にシステム改修するには約1年を要し、コストは1社最大1億円程度に上ると懸念が示された。市場関係者は減税のための財源が2年間で10兆円ほど必要になる点を問題視。経団連をはじめとした各経済団体は、減税ではなく給付付き税額控除を早期導入するよう主張した。
高市氏が特に立腹したのは、国民会議にぶら下げた有識者会議の議論。学者や民間エコノミスト、地方の首長ら12人で構成されるが、「2年間の減税は意味がない」「安定的な財政運営に配慮してもらいたい」と異論が続出したからだ。
総スカンの状況に、高市氏は疑心暗鬼になる。国民会議の舞台回しを実質的に担う財務省は減税を忌避する体質がある。このため、自然と矛先が向いた。
宇波氏には不運な面もある。高市氏の怒りを伝え聞いた財務省の幹部たちは、誰が釈明に向かうか顔を見合わせるばかり。「じゃあ宇波に……」という空気になり、貧乏くじを引かされた。同氏は旧厚生省への出向経験もあり、社会保障に精通。過去に首相秘書官を務め、官邸慣れしている。
23年夏に官房長、24年夏に主計局長と順調に昇格した宇波氏は、今の特別国会が閉じる7月以降に事務次官に就くことが事実上内定している。政治に介入させない知恵として、大蔵省時代から「次の次」まで決めておくのが伝統だ。
ところが、坂本基官房長(平成3年入省)が官邸の人事検討会議に提出した案は、高市氏の「私が全て決める」の一言とともに宙に浮いた。代わりの次官候補の一人として、その坂本氏の名も取り沙汰される。現在の新川浩嗣事務次官(昭和62年入省)とは入省年次の開きがあるが、坂本氏は高市氏のお気に入りである尾崎正直官房副長官と入省同期だ。
この夏、高市首相は新たな「一手」を打つことになるのか――。


