「絶対にやってくれ」 「遊戯シリーズ」村川透監督が「松田優作」に出演を迫った有無を言わせない口説き文句

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何も言わないで芝居で見せてくれた

 1973年にドラマ「太陽にほえろ」(日本テレビ系)でデビュー、「ジーパン刑事」で人気者となるが、76年にはロケ先で傷害事件を起こし、謹慎生活も経験するなど、この当時はまさに波乱万丈の役者人生を歩んでいた優作。

「(優作は)すごい役者だけど、困難もいっぱいある中で、必死にやることで成功した。大切なのは志です。優作は侍だった。侍の心、魂とともに、志があった。そして男だから何も言わないで芝居で見せてくれた。それしかないことを彼はわかっていて、自分で考えて、オレが考えているような芝居をやってくれた。オレも彼の演技をダメとはいわなかったし。ダメな時は相談してやっていたからね。こうやろうと。彼は飲み込みも早かった」

「遊戯シリーズ」では、殺し屋の優作が、自らを鍛え上げるトレーニングシーンも有名だった。腹筋、逆立ち、シャドーボクシング。そして姿見をいくつも立て、ホルスターからマグナムを取り出す早撃ちの特訓……。

「『最も危険な遊戯』のキレは素晴らしかった。普通じゃできない。思いついた芝居もストーリーにきちんとハマるようにやっていたし、同じ芝居でも彼は、どの角度から撮るのか、その際に自分はどう見えるのか……そうした細かいことを全て考えてやっていた。あっち向いたり、こっちを向いたり、ひっくり返ったり、いきなりポーンと飛び出したり。自分を本当の殺し屋だと思って演じていました」

 優作とはドラマの「大都会 PARTII」(日本テレビ系、1977年)や「探偵物語」(同、79年)でもタッグを組んでいるが、優作は村川以外の監督との作品でも話題作に出演した。「家族ゲーム」(1983年、森田芳光監督)でも主役を演じ、ヨコハマ映画祭の主演男優賞を受賞。そして亡くなる直前に、米ハリウッド映画「ブラック・レイン」出演を果たした。

結婚してあげてもいい

 監督夫人の喜代子さんに以前、こんな話を聞いたことがある。

 喜代子さんは人間国宝の金工家・高橋敬典の娘で、監督は義理の息子になるが。

「プロポーズの時は『結婚してあげてもいい』と言われました。でも、惚れた弱みでね……。どんな時でも『はい』と言わないと怒るんです。それは結婚してからも変わりません」

 おそらく優作を口説いた時もそんな感じだったのだろうか。サングラスを外した村川監督の目元は柔らかいが、誰に何を言われようと自説を曲げない。秘めた芯のようなものが伝わってくる。助監督時代の鍛錬をバックボーンにした信念が、松田優作も惚れ込んだ「村川マジック」の核心だろう。

 来年で90歳。故郷の村山市(山形)で40数年ぶりに遊戯シリーズ「LAST DANCE 最後の遊戯」を撮り終え、編集作業を行っている。優作が演じた鳴海昌平と思われる男を宇崎竜童(80)、鳴海を追いかける元刑事の殺し屋を柄本佑(39)が演じている。脚本を担当したのは「処刑遊戯」の丸山昇一(78)。公開は26年度中の予定だ。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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