トランプ政権「銃撃未遂」で飛び交う流言飛語「企てたのは…」 もはや日常となった「陰謀論」が米国の民主主義を根幹から揺さぶる
「トランプ語録」に批判集中
米国の「裏庭」でも同様だ。コロンビアのペトロ大統領は、異議を唱える中南米の指導者に対する米国の圧力は、同地域での「反乱」につながりかねないと警鐘を鳴らした。
インドも反発している。インド政府は23日、トランプ氏がアンカーベイビー(外国人が国籍取得を目的に米国で生んだ乳児)批判に関連してインドを「この世の地獄」とSNS上で発言したことを不適切と批判した。米印関係はこのところ悪化しており、今回の発言でインドの対米不信に拍車がかかる可能性がある。
経済界からもトランプ氏の言動を危惧する声が上がっている。
著書『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』(ダイヤモンド社)で有名なナシーム・ニコラス・タレブ氏は、日本経済新聞に掲載されたインタビューで、トランプ氏こそブラック・スワンとの見解を示した。
ブラック・スワンはタレブ氏の造語で、想定外の出来事が社会や金融市場を揺さぶる事象を意味する。金融危機やパンデミックなどが典型例だ。世界で最も権力を有する大統領という職に就いているトランプ氏のきまぐれこそが、世界の政治経済にとって最大の脅威になったというわけだ。
陰謀論に飲み込まれるトランプ氏
トランプ氏の言動に世界が振り回される中、筆者が注目したのは、トランプ氏と陰謀論の関係が変わりつつあるとの指摘だ。
CNNは23日、「トランプ氏が育てた陰謀論という怪物、今や本人に襲いかかる可能性」と題する論説記事を掲載した。記事によれば、トランプ氏ほど陰謀論を主流派の言論に持ち込んだ人物はいないが、自身が作り出した「怪物」が今や自身に降りかかろうとしているという。
その例として挙げているのが、2024年に起きたトランプ氏の暗殺未遂事件にまつわる疑惑だ。事件に不審な点がみられるため、暗殺は仕組まれた可能性があるとの主張が広まっているのだ。
今回の晩餐会襲撃事件でも同様の現象が起きている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は26日、襲撃事件の発生直後からSNS上で陰謀論や責任追及の動きが始まったと報じた。NYTによれば、“支持率低下やイラン戦争などから大衆の関心をそらす目的でトランプ陣営が企てた”とする陰謀論が広まっているという。
最も有害な陰謀論は選挙関連
トランプ氏が歴代大統領の中で最もSNSを駆使していることも陰謀論をあおる要因になっているのかもしれない。「策士策に溺れる」だ。
トランプ氏が流布した陰謀論で最も有害なのは、民主党の悪だくみのせいで2020年の大統領選挙で自身が敗北したというものだと思う。トランプ氏の主張が広く浸透したため、米国で選挙に対する不信感が高まっているからだ。
ロイターなどの最新の世論調査で、約46%が「米国の選挙で非市民による不正投票が多数行われている」という意見に「同意」と回答した。党派別にみると、共和党支持者の82%に上っている。
11月の中間選挙に向けてこの傾向がさらに強まれば、米国の民主主義の根幹が揺らぐ事態になりかねない。悩める超大国の動向について、引き続き高い関心をもって注視すべきだ。
[2/2ページ]





