「遺産相続で家族がバラバラに」「最高裁まで争うケースも」 円滑に資産を移行するための方法とは
親子間、きょうだい間で最高裁まで争うケースも
さて節税にあたっては、相続と贈与との「分岐点」が気になるところだ。前述の「持ち戻し」はいったんおくとして、年間いかほどの金額を子へ贈り続ければ、先々の子への負担を減らせるのだろうか。
仮に「暦年贈与」を用いて父から子に年間160万円を贈り続けた場合、基礎控除額の110万円を差し引き、課税額は50万円。200万円以下の税率は10%で、控除額ゼロのため税額は5万円となる。
相続税の「実質負担率」と比べると、資産1億円の父が毎年160万円より少ない額を子に贈与すれば、相続させるよりも負担を少なくできるというわけである。
言うまでもなく、先々の相続を無事に成し遂げるためには円満な資産移行が必須である。前編の芸能人らの例に限らず、もめ事はしばしば一般家庭でも見られるところだ。
実際に、24年の「司法統計年報」(最高裁判所事務総局)によれば、親族間における遺産分割トラブルのうち、遺産価額5000万円以下の事案が4分の3以上を占め、うち45%ほどは1000万円以下のケースだったという。“争続”は決して富裕層に限ったことではないのだ。税理士の浦野広明氏が言う。
「15年の基礎控除額引き下げと相まって、昨今は土地の路線価がどんどん上昇しており、相続税に大きな影響を与えています。固定資産税もアップするため、富裕層でない一般家庭の実質的な負担はますます増えていくでしょう。遺言書がなければ、相続税の申告期限である10カ月以内に相続人間で遺産分割協議をまとめなければならず、親子間、きょうだい間で最高裁まで争うケースも珍しくありません」
家族がバラバラになるケースも
メリットを見込んで行った生前贈与もまた、リスクの火種となりかねないと指摘するのは、行政書士の露木幸彦氏である。
「相続人が配偶者だけであるとか、子や孫が1人だけであれば問題ありませんが、兄弟姉妹や複数の孫がいたりすると、もめ事に発展しやすくなります。全員に平等に行き渡ればいいのですが、そうでないケースが圧倒的多数で、大体はかわいがっている子や孫に贈与するため、もらっていない人は怒ります。いざ相続する段になって“自分は生前こんなに尽くした”などと、外されたきょうだいらが言い出し、法定相続分以上を要求する実例を、私は山ほど見てきました。相続対策で生前贈与したはずが、かえって家族をバラバラにしてしまう恐れも大いにあるのです」
来たるべき日に向け、周到に準備するに越したことはないのだ。
前編では、有名人を例に相続税にまつわるトラブルを紹介している。
[2/2ページ]


