高校野球で看過できない不祥事が続出 “構造の歪み”が生む連鎖の正体

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少数精鋭モデルの難しさ

 智弁和歌山のように1学年10人程度に絞るチームがあるほか、今年の選抜で優勝した大阪桐蔭は1学年20人前後で全員入寮の形を取る。こうした少数精鋭モデルが理想だが実現できない学校が多い。 甲子園出場経験がある高校野球の監督は次のように語る。

「学校としては野球部員は学費を納める生徒ですから、経営を考えると数が少なすぎるのは困るという事情があります。野球部に限らず他の運動部も同じでしょう。既に多くの生徒を抱えている学校でなければ、少数精鋭での運営は難しいと思います。では指導者を増やそうとしても当然コストがかかります。監督は練習指導に加えて、有望選手を勧誘するために中学のチームを回ったり、進学先の大学との調整を行ったりと、グラウンド外の仕事が多い。限られた指導者では選手に目が行き届かなくなります。指導力の問題と片付けるのは簡単ですが、学校側のバックアップが十分でない中で苦労している指導者は多いと思います」

 私立校にとって授業料は重要な収入源であり、野球部が甲子園に出場して知名度が上がれば志願者増につながる。少子化の影響で経営が厳しい学校が増えている。十分な指導体制が整わないまま部員数が増え、不祥事の温床となっている側面は否定できない。

制度と現場の両方に目を向けた議論を

 同様の構図は他の部活動にも見られるが、野球には他の競技にない特有の問題があるという。前出の監督はこう続ける。

「部員が100人いても試合に出られるのは9人、DHを含めても10人。ベンチ入りは20人に限られます。3年間で一度もベンチ入りできない部員が出るのは珍しくありません。サッカーにも大所帯のチームはありますが、複数チームで大会に出られる点が大きく違います。BチームやCチームで練習試合をしても、公式戦とはモチベーションが大きく異なります。(原則として)転校しようとしても高野連の規定で1年間は公式戦に出ることができないため、実際に動く選手は多くありません。結果として試合に出られない部員に指導者の目が届かず、不祥事につながるケースは少なくないと思います」

 近年は有志によって公式戦のない期間にリーグ戦を行う動きが出てきている。高野連は加盟校による独自大会の開催を認めていない。あくまで練習試合の扱いにとどまる。加盟校数や部員数の減少を問題視しながら、試合に出場できない選手が多数いるという歪んだ構造が、不祥事の背景にあることは否めない。

 高野連は昨年12月の理事会で、同一校から複数チームが大会に参加する案を検討していると一部のメディアで報じられた。この施策だけで問題が解決するとは言えない。ただ、現状の歪みが続く限り、同じ問題は繰り返される。制度と現場の双方に目を向けた議論が、これまで以上に求められている。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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