広告業界に響く「AIのせいで俺の存在意義はなくなった」の嘆き…顧客へのプレゼンの準備作業は「抜群にAIとの相性がいい」
AIをうまく使える人材がよりフィーをもらえるようになるビジネスモデル
これらは全て、“なんとなくのフィーリング”でクライアントにプレゼンすることはできない。「何が根拠で」「何が出典で」「過去の似たような企画の効果はいかほどだったか?」に加えて、「パクリ」と言われないためにも他社の表現を徹底的に確認する必要が出てくる。松竹梅とは「松=お金がかかるもの、ないしは尖った冒険心のある企画」、「竹=中庸でそこそこ尖っているが、安心感も兼ね備えた企画」「梅=金額が安く石橋を叩いた確実な企画」といったところだが、これもAIに考えてもらえばいい。
定年間近の人と話をすると「AIはよく分からん! まぁ、オレはそんなに使わないでもなんとか逃げ切れそうだがな!」と妙に嬉しそうだった。一方、広告会社との会議を定期的に行っているが、若手は上記(1)~(9)の仕事をするのに手間がかからなくなったという。
さらに、これらに時間がかからなくなったため、残業時間は減り、さらには、外注費用が減ったという。というのも、もともと、広告ビジネスは大手広告会社がアイディアは出すものの、制作会社に様々な書類やコンテ、イベントの進行台本等を発注し、「進行管理費」を払う商習慣があったのだ。だが、この若手氏曰く「AIをうまく使える人材がよりフィーをもらえるようになるビジネスモデルになるかもしれない」と語った。
AI以前の時代に起きた「東京五輪エンブレム騒動」
そして、昭和から平成にかけ、糸井重里氏や仲畑貴志氏、佐藤雅彦氏といった、スターコピーライターやCMプランナーは多数誕生したが、今後はそうした人々は輩出されにくくなるかもしれない。昨今の広告業界では、キャンペーン全体を構築できたり、大拡散するクリエーターのスターは存在するが、AIの活用はその流れを強くしていくかもしれない。商品コンセプトやパッケージに始まり、広告やキャンペーン全体を、AIを駆使して組み立てていくようなスーパープロデューサーである。
こうした時代になると、返す返すも2015年の「東京五輪エンブレム騒動」の時代にAIがあったら……と思ってしまう。一旦採用されたエンブレムに「パクリ疑惑」が勃発し、撤回に追い詰められた件だ。あの時、「全く違うデザインを見つけることは難しい」などと広告業界の人々は擁護したが、AIがあればより厳密なチェックができたかもしれない。ただ、あのエンブレムはAからZまですべての文字が綿密に作られているため、私自身はオリジナリティがあったとは思っているが……。
しかし、あの時デザイナー氏がダメージを負ったのは、同氏デザイントートバッグのキャンペーンで30種類中8種類に剽窃疑惑が出たことである。これもAIを使っていれば、回避できたかもしれない。さらには、プレゼン資料で、羽田空港の写真が登場したが、これはとある外国人観光客の撮影した写真を流用したもの。内部資料ではよくやることではあるものの、さすがに五輪という公過ぎる場では相応しくないとこれも糾弾された。だが、AIでこの画像を作れる時代だったならば……と今となっては思ってしまうのである。
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