わが子のために妻は仕事を辞めたのに、教育費が払えなくなった――世帯年収1400万円の30代夫婦が陥った「借金1200万円」の皮肉【FPが助言】

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「花より男子」の世界から抜け出す勇気

 一つは「外車を売却し、習い事をすべて整理して極限まで節約する」こと。二つ目は、「借入先に相談して債務整理を行って金利をカットしてもらう代わりに、数年間はカードもローンも使えない不便な生活を受け入れる」こと。いずれも茨の道だが、子どものことを考えればこそ、現状維持だけはありえない。

 岩切さんはこの夫婦の本質的な問題をこう分析する。

「収入が下がったのに、望むコミュニティに無理して居続けようとしたことが最大の問題です。ドラマが話題になった『花より男子』で主人公がセレブ学園でさまざまなギャップに当惑したように、身の丈に合わない環境で周囲と同じ土俵に立とうとすれば、無理が生じるものなのです。そして、現実はドラマよりはるかに厳しい」

 夫側にも反省点はある。「1,000万円稼ぐのは大変なんだ」と多忙を理由に妻子の生活や家計に無関心でいたことが、妻の支出の加速を止められなかった理由でもある。

 岩切さんによると、世帯年収800万円の家庭は堅実にやりくりする傾向が高い一方、1,500万円前後の家庭にむしろ「使いすぎ」で蓄財できない傾向がみられるという。

「毎月手取りで100万円近い現金が入ってくると、『今月使いすぎても来月また入ってくる』という錯覚に陥り、支出管理が極端に甘くなるのです。ライフスタイルが派手になりがちな高年収こそ、管理能力がなければ負債の膨らみ方も早くなるんです」

 岩切さんは現在、夫婦が協力して家計を立て直せるよう、対話を促している。

「仕事ができることと、お金の扱いに長けていることは全く別物です。大切なわが子の教育を最優先にしたいなら、まずその土台となる家計を夫婦で協力して守る賢さを持つべきではないでしょうか」

 自分たちが本来どのレベルの生活を送るべきか。「身の丈」を夫婦で正直に話し合うこと――それが、子どもの未来を守る最初の一歩になる。わが家の「身の丈」は、正しく定義できているだろうか。今一度振り返りたい。

※プライバシー保護のため、事例にはアレンジを加えています。

岩切健一郎(いわきり・けんいちろう)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)。1986年生まれ。29歳で適応障害とADHD(注意欠陥多動性障害)の診断を受ける。コンサルティング会社や外資系保険会社の営業職を経て、現在は保険代理店に在籍。合同会社ひなた代表として、発達障害当事者やその家族に特化したFPとして活動中。著書に『発達障害かもだけど、お金のことちゃんとしたい人の本』(ダイヤモンド社)がある。

取材・文/鷺島鈴香

デイリー新潮編集部

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