「言論統制」をチラつかせるトランプ氏…「大きな誤算」イラン戦争長期化、イスラム嫌悪が米国の政情不安リスクを高める
MAGAの支持離れは起こりうる
おなじく13日、エネルギー省はカリフォルニア沖での原油生産を再開させる措置も講じた。これにより、日量5万バレル程度の原油が生産できることになるが、ホルムズ海峡封鎖に伴う供給減(日量約1500万バレル)と比べるとその規模はごくわずかだ。
原油価格の高騰で米国経済に下振れリスクが生じていることも気になるところだ。
戦争が長期化するにつれて、市場関係者の間では消費減速の警戒が強まる一方、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ再燃を憂慮して年内の追加利下げを見送るとの観測が広まっている。
トランプ氏はFRBのパウエル議長に対して改めて利下げを求めているが、今回も袖にされるのは確実だ。
トランプ氏への支持状況をみると、岩盤支持層であるMAGA(米国を再び偉大に)派はイラン攻撃に肯定的だ。米国本土を攻撃しかねないテロ国家から自国の安全を守るため、イランを攻撃するしかなかったとするトランプ氏の主張を受け入れている。
だが、米軍の死者(16日時点で13人)が増加し続ければ、MAGA派の支持離れが起きる可能性は十分にある。
言論統制、テロ、厳戒態勢
支持率の低下を恐れるトランプ政権は、言論統制を実施する構えを見せている。
米放送事業を監督する連邦通信委員会(FCC)のブレンダー・カー委員長は14日、メデイア各社に対し、中東関連報道の内容次第では「放送免許を失うリスクがある」と警告を発した。トランプ氏がカー氏の主張に賛意を示したこともあり、予断を許さない情勢となりつつある。
米国でイスラム教徒によるテロも相次いでいることも気がかりだ。
バージニア州のオールド・ドミニオン大学で12日午前、銃撃事件が発生し、銃撃犯を含む2人が死亡した。同日午後にはミシガン州でユダヤ教礼拝堂に武装した男がトラックで突っ込み、警備員との銃撃戦の末に現場で射殺される事件も起きた。
米ハリウッドで15日に開催された第98回アカデミー賞授賞式は、爆発物探知犬を動員するなど厳戒態勢で実施されたほどだ。
「イスラム嫌悪」の風潮は911後よりも深刻
このような状況が災いして、共和党支持者の間でイスラム嫌悪の風潮が強まっている。AFPは14日、共和党議員から扇動的な発言が相次ぎ、イスラム嫌悪を巡る議論が再燃したため、共和党指導部は対応に迫られていると報じた。
2001年の同時多発テロ後もイスラム嫌悪の風潮が強まったが、今回ははるかに深刻だ。当時と比べて社会の分断が進んでいるからだ。民主党支持者がイスラム嫌悪を批判すればするほど、共和党支持者が反発するだろう。
トランプ氏がイスラム嫌悪を煽るメッセージを発信する可能性も排除できない。トランプ氏は非常事態を宣言して、今年11月の中間選挙を無効化する企みを持っているという憶測が流れているからだ。
イランの内戦リスクが取り沙汰されているが、米国の政情不安リスクも軽視できないと思う。悩める超大国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。





