新人王争いは“2年目世代”が主役 西武・篠原響を本命視する理由

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穴を埋める存在

 ルーキーでは稲川竜汰(九州共立大→ソフトバンク2位)の評価が、このキャンプで一気に高まった。折尾愛真時代から福岡県内では評判の右腕で、九州共立大でも入学直後から先発として活躍。1年春に出場した大学選手権では、強豪の東北福祉大を相手に11奪三振完封勝利をマークしている。その後は怪我の影響で3年時はリーグ戦登板がなく、最終学年で復活してドラフト2位という高い評価でプロ入りした。

 圧巻だったのはオープン戦初登板となった3月1日の西武戦だ。9回から5番手で登板すると、1イニングを三者凡退、2奪三振と完璧な内容。ストレートの最速は154キロをマークした。この投球には稲川をマークしていた他球団スカウトも驚きを隠さなかった。

「素材の良さは以前から分かっていましたが、膝を痛めていた影響でランニングや下半身のトレーニングができず、復帰後もしばらくはボールが走っている印象ではありませんでした。だからソフトバンクが2位で指名した時には驚きましたね。ただ回復すれば短いイニングでこれだけ投げられるという確信があったのでしょう。戦力に余裕があるチームだからこそできる指名だと思います」(九州地区担当スカウト)

 豊富な戦力を誇るソフトバンクだが、ここ数年中継ぎを支えてきた藤井皓哉が2月にトミー・ジョン手術を受けて長期離脱。セットアッパーの松本裕樹はWBC出場による影響が懸念される。その穴を埋める存在として、稲川がフィットする展開があっても不思議ではない。

混戦模様

 その他のルーキーでは藤原聡大(花園大→楽天1位)、小島大河(明治大→西武1位)、毛利海大(明治大→ロッテ2位)の上位指名3人が即戦力として期待される。

 藤原は、水口時代には無名に近い存在で、大学でも2年春に大学選手権へ出場した程度と大舞台での実績は多くない。それでも最終学年で評価を一気に高め、ドラフト1位指名を受けた。躍動感あふれるフォームから投げ込む150キロ超のストレートと鋭く変化するカットボールが武器で、奪三振能力の高さが光る。オープン戦でもこれまで2試合4回を投げて無失点、4奪三振と好投を続けている。楽天は昨シーズン、規定投球回に到達した投手がいなかったため、藤原に巡ってくるチャンスは少なくないだろう。

 小島は、東京六大学で通算84安打、打率.349をマークした強打の捕手。大学日本代表にも3年時から選ばれ、国際大会でも結果を残してきた。右足を高く上げる一本足打法から繰り出す打撃はミート力が高く、高橋由伸(元・巨人)を彷彿とさせる。捕手としての肩の強さは突出しているわけではないが、もともと内野手だったこともありフットワークの良さは大きな武器だ。キャンプ終盤に太ももを痛め、現在は別メニューで調整している。ただ軽傷とみられており、今後の実戦でのアピールが注目される。

 毛利は、東京六大学で通算14勝2敗をマークしたサウスポーだ。大きなカーブをはじめ多彩な変化球を駆使した投球は安定感があり、試合を作る能力の高さは大学球界でもトップクラスと評されてきた。体格はそれほど大きくなく、ストレートの威力がプロの一軍では平凡に映る点は課題となる。オープン戦初登板となった2月23日の中日戦では木下拓哉にストレートをライトスタンドへ運ばれたが、その後は落ち着いて立て直し、2イニングで2三振を奪った。左の先発候補が多くないチーム事情を考えれば、開幕ローテーション入りを狙える立場にいる。

 昨年のパ・リーグ新人王争いは、開幕直後から渡部聖弥(西武)、宗山塁(楽天)が存在感を示し、最終的には夏場以降に大活躍した西川史礁(ロッテ)が逆転でタイトルを手にした。さらにルーキー以外では達孝太(日本ハム)ら若手投手の台頭が目立ち、シーズンの流れによって主役が入れ替わる展開となった。今年の新人王争いも、投手を中心に混戦模様となりそうだ。シーズンが進むにつれて勢力図が大きく塗り替わる展開が期待される。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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