劇的ホームランだけじゃない…「侍ジャパン」を世界連覇に導く大谷翔平、もうひとつの“大事な役割”

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「与えた1点は返ってこない」

 1位通過での決勝ラウンド進出を決めたオーストラリア戦は、両チーム無得点で前半を終える初めての展開となりました。

 こういう試合では、些細なミスが命取りになることが多いのが野球です。6回1死2塁のピンチの場面で、捕手・若月健矢(30)の3塁悪送球がきっかけで先制を許す、イやな流れになりました。

 プロ野球の世界では「エラーや押し出しで与えた1点は返ってこない」という言葉があります。

 ヒットやホームランで「取られた点」は取り返せるが、自ら「与えた点」は返ってこない、というのです。

 この日のチームを救ったのが、次の7回で飛び出した、吉田の逆転2ランでした。試合をひっくり返すだけでなく、エラーで失点した若月を救ったことが今後の戦いに大きな意味を持つ一発でした。

 この試合で「おや?」と思ったのが8回、1死1,3塁で近藤健介(32)に打順が回った場面です。ここまでノーヒットと、打席での近藤は結果を出せていませんでした。

 ここでタイムリーを打てば、もともと力のある選手。短期決戦にありがちな変な呪縛から解き放たれて、本来の姿を取り戻すまたとないチャンスだと思いました。しかし、井端監督の采配は「代打・佐藤(輝明・26)」でした。

 結果は佐藤が起用にこたえ、タイムリー2ベースを放つのですが、近藤に代打を送ったことで、井端監督の「目の前の1試合1試合、確実に勝利をもぎ取る」強い意志を感じました。

「情などを排し、冷徹に勝負に徹する」

 井端監督は、この思いでWBCの采配をふるうと思います。

 代打を送られた近藤の胸中は察するに余りありますが、短期決戦では打率以上に大切なのが「いつ打つか」。ここぞという場面でヒットが出れば、それまでどれだけ不調でも関係ありません。特に決勝ラウンドはトーナメントの一発勝負。必ずそういう場面が巡ってくると思います。近藤には心を強く持って「その時」に備えてほしいです。

NPB野手に期待

 1次ラウンド1位通過で連覇に向け大きく前進した侍ジャパンですが、個人的に気になっていることがあります。

 それは特に野手で、NPB組がMLB組と比べ目立っていないことです。

 確かにホームランは野球の華で派手ですが、相手にとってボディブローのように効くのは、連打連打で得点されること。

 NPB組の「つなぐバッティング」が間違いなくチームをさらに強くします。NPB組のさらなる奮起を期待します。

 さあ、いよいよ準々決勝。彼らがどんな試合を見せてくれるのか、精一杯応援します。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。

デイリー新潮編集部

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