安倍元首相狙撃の「真犯人は闇の勢力」といった“陰謀論”はなぜ後を絶たない? 「山上被告が犯人じゃなかったら」…素朴な“もしも”が「SNSで補強され続けてきた」
ネットが陰謀論に与えた影響
陰謀論は「もしも」という空想から始まっていることは重要だという。当然ながら事実には全く根差していないからだ。あくまでも「もしも山上被告が犯人じゃなかったら怖いよね」が最初であり、それを“立証する事実”は後付けの形で付いてくる。
「『もしも』という空想から始まった言説のため、昔の都市伝説は荒唐無稽なものも目立ちました。ところがインターネットの登場で誰でも簡単に膨大な情報にアクセスできるようになりました。さらにSNSの発達は面識のない人々の交流を可能にしました。陰謀論を巡るネット上の議論が活発化したことで、論理破綻が明確な陰謀論は減少したのです。『もしも安倍元首相の事件で真犯人が別にいたら怖いよね』という“陰謀論の萌芽”がSNSに投稿されると、例えば『統一教会の没落で得をするのは創価学会』という陰謀論を補強する“ネタ”が投稿されます。ネタを反映した陰謀論はリアリティを増した印象を与え、『安倍元首相を苦々しく思っていたのは媚中派で、創価学会も媚中派』と新しいネタが加わります。こうして陰謀論は無数のネタを取り込んで成長を続け、一見するとそれらしい言説に整っていくというわけです」(同・井上氏)
第3回【「安倍元総理」銃撃事件は「陰謀論者が興味を持ちそうな要素が多かった」と識者…陰謀論が蔓延する背後には「正義感と優越感」】では、安倍元首相の悲劇と陰謀論の意外な“親和性”などについて詳細に報じる──。
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