早稲田、慶応、上智…芸人界を席巻する「大学お笑い」 実力派がズラリ…若者から支持

エンタメ

  • ブックマーク

大学進学が一般化

 このように「学生お笑い」出身芸人が華々しく活躍するようになった背景には、いくつかの社会的・文化的要因がある。まず、大学に進学すること自体が一般化して、知的関心とエンタメ志向の両立が可能になった。かつてはお笑いというジャンルにあった「ヤンチャで不良っぽいもの」という偏見が薄れ、むしろ「頭の良い人間がやる知的な表現」として受け入れられるようになったことで、東大・慶應・早稲田・上智といった一流大学の学生が、お笑いの世界に足を踏み入れることに対するハードルが格段に下がった。

 また、今では大学お笑いのレベルも高くなっているという事情も見逃せない。学生主導の大会やライブが年々増加し、ネタのクオリティもプロ顔負けの水準に達している。こうした環境において、学生たちは早い段階でお笑いに必要な技術を学び、プロになる前に経験を積んでいる。大学お笑いはもはや単なる趣味の延長ではなく、即戦力の「お笑いアスリート」たちのトレーニング場となっているのだ。

 さらに特筆すべきは、彼らが持つインテリ的なセンスと、社会的感度の高さである。彼らは時事ネタや価値観のアップデートにも敏感であり、差別やハラスメントなどの問題を避けながら面白いものを見せるスキルを備えている。これは、単に言葉選びに気を使えるというだけでなく、思想としての現代性を備えているということだ。「大学お笑い」出身芸人が同世代の若者を中心に熱く支持されているのも、こうした時代の空気と無縁ではない。

「大学お笑い」出身芸人の台頭は、一過性のブームではない。彼らはプロになる前から時代の空気を読む感性と豊富な舞台経験をあわせ持っている新しいタイプの芸人である。彼らの存在がお笑いというジャンル自体をより多様で開かれたものへと変えつつある。かつては「お笑いに学歴は不要」と言われていたが、今ではそういう考え方もなくなってきた。

「大学お笑い」出身芸人の勢いはしばらく止まりそうにない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。