「1時間座りっ放しだと、22分余命が短くなる」 デスクワークの「座り過ぎ」を防ぐ方法を専門家が伝授
【前後編の後編/前編からの続き】
人間とは怠惰な生き物である……。本誌(「週刊新潮」)掲載の「健康記事」を厳選した『ラクに長生きしたい人のための よくばり健康法』(新潮新書)が発売された。過度に頑張らずとも長寿を実現できる方法とは。頭から下半身まで、各専門家が部位ごとに指南する「全身健康法」。
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前編【「1日3錠×3日間」より「1日1錠×5日間」の方が高リスク… 薬物乱用頭痛を避ける方法】では、日本人のうち4000万人以上が悩んでいるという「慢性頭痛」について、薬との付き合い方などについて解説。そのほか、目や鼻、肝臓のトラブルへの対処法についても紹介した。
国内に推定2800万人いるとされる腰痛持ち。シドニー・アテネ・北京五輪で水泳チームドクター、ロンドン五輪ではJOC本部ドクターを務めた早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治氏は、鎮痛薬の使用などは対症療法であり、腰痛の「根治」を目指すべきではないかと訴える。そのためには、腰椎を安定させてくれるインナーマッスルの「コルセット筋」、具体的には体幹を取り囲んでいる腹横筋と、背骨に直接付いている多裂筋の「サボり癖」を直し、目覚めさせることが重要だと言う。
どんなストレッチをすればよいか
「基本中の基本として私が推奨しているのが、お腹を引っ込めるという意味の『ドローイン』です。
まず、仰向けになって膝を立てます。その状態で、床と腰の間にできる空間に手を入れ、入れた手を押しつぶすようにして、できるだけ空間が生じないようにおへその辺りをへこませてください。そのまま軽く息を吐いて10秒程度姿勢をキープする。こうすることで眠っていた腹横筋が働き出します。
その状態から右脚を真っすぐ斜め上に上げてやはり10秒キープ、ゆっくり下ろして同じ動作を左脚で行う。この『脚上げドローイン』を行うことで、腹横筋を効かせながら脚を動かす練習をしましょう。
ドローイン、脚上げドローイン共に、3回を1セットとして1日数セット行うだけで、サボり癖はかなり直っていくはずです」
「さらに腹横筋に加えて多裂筋を目覚めさせるには、『ハンドニー』が効果的です。四つん這いになり、骨盤が左右に傾かないように意識して、左腕を前に真っすぐ伸ばし、同時に右脚も後ろへ伸ばして10秒キープする。いったん、腕と脚を下ろして、今度は右腕、左脚で同じことを繰り返す。これも3回1セットを1日1~3セット継続すれば、多裂筋は徐々に目覚めていくでしょう」
「体全体で空ぶかしをしているようなもの」
最後は、下半身全体の動きの“停滞”が、いかに全身に不具合をもたらすかについて。東京都老人総合研究所・介護予防緊急対策室主任などを務め、健康行動科学、行動疫学を研究している早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗氏が警鐘を鳴らす。
「健康を維持するためには、何をおいても体に血液を遍(あまね)く行き渡らせなければなりません。しかし、私たちはある姿勢を続けることでそれを阻害しています。太ももの裏が押され、膝は折れたままの状態で、鼠径部(そけいぶ)も圧迫される。
これではいくら血流を良くしたくても、体のあちこちに自ら障害物を作っているのに等しく、人体のポンプでありエンジンともいえる心臓がどれだけ頑張ったところで意味がない。言ってみれば、体全体で空ぶかしをしているようなものです。しかも、無意識にその姿勢を長時間とり続けています」
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