「1日3錠×3日間」より「1日1錠×5日間」の方が高リスク… 薬物乱用頭痛を避ける方法

ドクター新潮 ライフ

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【全2回(前編/後編)の前編】

 人間とは怠惰な生き物である……。本誌(「週刊新潮」)掲載の「健康記事」を厳選した『ラクに長生きしたい人のための よくばり健康法』(新潮新書)が発売された。過度に頑張らずとも長寿を実現できる方法とは。頭から下半身まで、各専門家が部位ごとに指南する「全身健康法」。

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「『国際頭痛分類第3版』によれば、頭痛は分かっているだけで367種類もある、れっきとした病気です。しかも、何らかの慢性頭痛に悩んでいる日本人は4000万人以上いるとの統計もあります」

 こう解説するのは、ドイツとアメリカの大学で脳神経内科を学んだ頭痛専門医の丹羽潔氏だ。丹羽氏は、『よくばり健康法』の中で三大頭痛といわれる「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の違いについて説明し、頭痛持ちの人の多くが頼みの綱としている薬に関する誤解についても触れている。

薬物乱用頭痛

「巷(ちまた)には、非常に多くの種類の鎮痛薬が流通していますが、専門医の立場から誤解を恐れずに言うと、どの銘柄も効き目に大した違いはありません。

 むしろ気を付けたいのは、薬の飲み過ぎです。実際、薬物乱用頭痛(MOH)という種類の頭痛が存在します。これは鎮痛薬の使い過ぎによる頭痛で、痛みを和らげるために飲んだ薬のせいで頭痛になるという本末転倒な現象が起きてしまうのです。

 MOHを考える上で大事なのは、鎮痛薬を『何錠飲んだか』よりも『何日飲んだか』です。脳の中には痛みの“番人”のような存在がいて、薬を飲んでいる状態が長くなると、その番人に変化が起こり、比較的軽度の痛みでも強い痛みと誤認させるように働いてしまうのです」

「1日3錠を3日間」より「1日1錠を5日間」の方が高リスク

「例えば鎮痛薬の量を1日1錠に抑える代わりに5日連続で飲んだ場合(合計5錠)と、1日に3錠飲む代わりに3日間で服用をやめたケース(合計9錠)とでは、一見、後者のほうが体に悪そうですが、実は前者のほうがMOHのリスクは高くなります。もちろん、1日の服用錠数は定められた限度内であることが大前提です」

 思考をすっきりさせ、また認知症の原因といわれるアミロイドβを排出するためにも、良質な睡眠が欠かせない。日本睡眠学会総合専門医・指導医で米スタンフォード大学客員教授の遠藤拓郎氏は、夜の「よりよい睡眠」のためには、日中の「よりよい覚醒」が必要だと指摘。それを実現するには、昼に眠気が襲ってきた時の対処が重要で、「パワーナップ」がお勧めだという。

「パワーナップとは、コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マース先生が1998年に提唱した短い昼寝のことです。平たく言うと『ちょっとした昼寝』です。これをすることによって、作業効率の改善が図れるのです」

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